多くの日本人が知らない「人口減少」と「東京一極集中」本当の意味

首都圏から見た地方創生【前編】
山下 祐介 プロフィール

過剰な人の動きをもたらす一極構造

さて、このように考えるなら、各地に仕事づくりや人口誘致を競争させ、新たな人口増地帯を生み出すのではなく、もっと別のマクロな方策――構造的問題の解決――を検討した方がよいはずだということになる。

いま地方創生では「地方の仕事づくり」をもくろんでいるが、必ずしも人は仕事だけを求めて動いているのではない以上、「仕事づくり」とは別の視点で人口問題の解決を図る必要がある。

まして首都圏には仕事はあるのだから、ここでこれ以上仕事を増やして、地方からさらに人口を奪うようなことがあってはならない。人口は減るということに正面から向き合う政策を、首都圏においてこそまずは作り上げていくべきである。

ここではそうした政策の柱となるべき考え方として、次のように整理しておきたい。

 

まず第一に必要なのは、人口減少地帯の出生率を回復することである。人口の奪い合いをして社会増減をいじる前に、まずは今住んでいる人々の人口の再生産力を回復することだ(①)。結婚支援、子育て支援は地方や農山村で盛んに行われているが、まず必要なのは首都圏における対策だ。

その上で第二に、社会増減もふくめて人の移動のあり方を今一度見直すことだ。とくに、過剰な人の動きを抑制し、調整していくことが必要である(②)。

①②の論理を明確にするためにも、はっきりと言っておこう。もはやこれ以上の都市郊外の拡大は止めるべきだ。国家全体として人口減少に入った以上、あらたな市街地形成は抑制できるようにする必要がある。これは高層化についても言える。

そして、このことが重要なのは、郊外型の住宅団地や高層マンションは、必ずしも子育てにとって有利な場所ではないからである。一方で都市拡大を調整して今一度都心へと人口回帰を進めるとともに、すでに形成されている郊外住宅をふくめ、現在の子育て世代の子育て環境を充分に育成していくことが必要である。そのために大切なのはまずは次の視点である。

ここまでは東京一極集中に対する首都圏一極集中を強調してきた。ここからはここに、郊外への人口集中と、都心への仕事の一極集中を対置して、首都圏の内部構造を浮き彫りにしてみよう。

人口の集中といった場合、必ずしもその集中場所は都心への集中を意味しない。子育て世代が働く場所は都心だが、住宅は郊外においていることが多いとすれば、人口集中地帯はむしろ郊外ということになる。

他方で、それはまた住民票のおいてある場所だけに注目するからそういう議論になるわけで、働く場から見れば、働く場は都心に集中しており、この人々は平日の昼間は都心にいる。

要するに、東京一極集中といっても、「ひと」「しごと」の分布には違いがあるということである(以上は地方の中核的な都市、とくに県庁所在都市などでも同じ)。

そしてこのことが何を意味するかといえば、都心にはオフィスや財は集中できるとしても、人はそうはいかず、逆にオフィスや財の中心地から離れて住んで、仕事のために日々人が長距離移動するという生活スタイルをとらざるをえないということである。

そして、この日常的な過剰移動こそが、首都圏における出生力低下の正体である可能性が高く、要するに人が首都のために日々過剰に動いているこの構造こそが、人が生まれない社会を生み出している原因だと論ずることができるのである。

だとすれば、例えば、都心から郊外へ、あるいはさらに地方への企業の分散こそが必要だということになるが、しかしまた都心にオフィスが集まっているからこそ、人々は自由に仕事を選ぶこともでき、例えば夫婦ともに同じように働けるのであった。