多くの日本人が知らない「人口減少」と「東京一極集中」本当の意味

首都圏から見た地方創生【前編】
山下 祐介 プロフィール

4都県の市区町村の人口を見てみると、その人口増減の状態は、競争に勝った負けたというよりも、むしろ全体の中で見たときのその地域の位置が――それもごく近年の変化が――深く関わっているようである。

増加地帯は全体の構造によって決まっている。そこにはむろん各自治体の努力もあるのかもしれないが、それ以上にもっと大きな要因が働いているようだ。「頑張った地域が成功している」というのは、実態にそぐわない、というべきである。

人口の増減を決定するマクロな構造的要因として、もっとも目立つのは、①交通である。高速移動を可能にする交通手段が新しく敷設された場所の周辺で、人口が伸びる。

これは首都圏に限らずどこでも同じ傾向が見られ、JRや私鉄沿線はもちろんのこと、地方もふくめれば新幹線駅や空港の周辺などでも増加が目立つ。もっとも目立つのはつくばエクスプレス沿いだが、細かく見ればバイパスやトンネルの開通、高速道路のインターチェンジの設置などでも同じような事が起こっているようだ。

第二に、そうした交通の便のよいことが条件であるが、②新しく広大な住宅団地が開発された場所で人口増加が起きている。そしてしばしばこうした人口増地帯は、都心に近接して(つながって)生じるよりは、やや離れた場所に、浮島のように現れるという特徴も持つ。

 

①②をあわせてみれば要するに、こういう事が起きているのである。結婚し子育てをしようと考える若い人々が住宅をもつ際に、都心に通勤できる場所でかつ安価な住宅を求めることができるところに、人口増の場所がうまれる。

これは要するに、都心の仕事と家族の暮らしをどうにかこうには両立させようとして、新しい住宅団地でかつ安価でかつ交通の便がよい、そういう場所を人々が求めた結果である。

こうした場所は、都心居住に比べれば通勤するには不便である。しかしまた都心から離れれば離れるほど、通勤時間さえ覚悟すれば座って通うこともでき、楽でもある。

こうして都心に通う労働者が子どもや家族のために自分を犠牲にすることで、新たな交通開発と住宅地開発がセットとなって、新しい郊外がこれまで数多く作られてきた。人口増加が今も起きているのはそうした場所である。

ただし、こうした郊外は必ず老朽化し、住民も高齢化する。子育てが終われば少子化が始まる。決して持続可能な場所ではなく、むしろ一過的な人口増で終わる可能性が高い。

すでに多摩ニュータウンをはじめ、昭和40年代前後に開発された初期の郊外住宅地でそうした現象(ニュータウンのオールドタウン化)が起きているのだが、にもかかわらず、さらに新たな郊外となる開発場所を探して、交通を拡大し、都市域を膨張させていこうとする勢力があり、その傾向は今も止まっていない。

加えて、③新たな産業立地・再編のあった場所にも人口増が起きる。ただしここにも付言が必要である。

近年は新たな製造業などはなかなか興こらないので、基本は関係する企業や業界の再編統合によって(とくにグローバル化や業界全体の再編の波の中で)「選択と集中」が行われた際に、集中の方に選ばれた場所で人口増加が起こっている。

それゆえその反対側には人口の抜けた地帯が存在するわけであり、全体としては縮小傾向の中での現象だということである。