このご時世に「政府」はいつまで古いOSのままなのか?

絵空事ではない〈未来政府〉のかたち
池田 純一 プロフィール

現代政府の「惨状」を超える

ところで、『未来政府』の冒頭でニューサムは、現代の政府が自動販売機のようになってしまっている惨状を正面から受け止めている。

政府が自動販売機になっているというのは、政治学者のドナルド・ケトルが有名な『なぜ政府は動けないのか』という本の中で指摘したことで、税金を払うことで何らかの行政サービスを政府が与える様子を、コインを入れたら缶コーラが出てくる様に例えている。

この場合、政府は自販機のような一種のブラックボックスとして捉えられている。「インプット=税金」と「アウトプット=行政サービス」だけが市民が関わるところであるというモデルだ。

ニューサムは、この自販機モデルとしての政府の理解を、彼が未来の政府を構想する際の反面教師にしている。

彼のいう「未来政府」は、自販機モデルの真逆のもので、ブラックボックスの中身を公開して透明化し、できれば市民自身にその過程にも関わってほしいと思っている。

いわゆる「オープン・ガバメント」と呼ばれるものをニューサムは想定しているわけだ。

そのような柔軟性は、連邦政府でも州政府でもなく、日々の行政サービスを通じて等身大の存在として実感することができる市政府だからこそ可能であり、相応しいと考えている。だからこそのCitizenvilleなのである。

このあたりも「ボトムアップ」の動きを重視するアメリカらしい考え方といえる。

ニューサムからすれば、政府機構をどんどん公開していき、極論すれば一つのプラットフォームにまで拡げてしまい、あとはその政府=プラットフォームの成員である「一般の人びと」の好きにまかせて、自律的に「政府/プラットフォーム」が運営されていけばいいのではないか? とすら考えているようにも思える。

まさに自分たちの街を「Ville」と捉える手触り感から来る「参加性」に支えられたものだ。そのデモクラティックな理想像は極めてベイエリア的だ。

もともとカリフォルニアは、アイデア=観念に基いて何かを作り上げることに対して寛容であり、肯定的だ。

そもそも現在、カリフォルニア州知事を務めるジェリー・ブラウン自身、ベビーブーマー世代であり、ということは、今日のシリコンバレーの精神的基盤を築いたといわれる、カウンターカルチャー世代の伝説的雑誌「ホール・アース・カタログ」の薫陶を受けた世代でもある。

〔PHOTO〕gettyimages

実はブラウンがカリフォルニア州知事を務めるのは二度目のことであり、かつて1975年から1983年まで2期、州知事を務めていた。その時の彼のブレインには「ホール・アース・カタログ」の編集長でビジョナリのスチュアート・ブランドも参加していた。もちろん、ニューサムも、『未来政府』の中でブランドにインタビューをしている。

だから、ニューサムは正しい意味で、ブラウンらホール・アース・カタログ世代が目指した理想の政府を築く後継者でもあるわけだ。

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