# 経済事件

戦後最大の経済事件「イトマン事件」とは何だったのか?

住銀はあらゆる手でカネをむしり取られた
週刊現代 プロフィール

 國重さんは著書で「会社更生法を申し立てていたとしたら。その後の日本の金融史は大きく変わり、改革が早まって、『失われた10年』もなかったのではなかろうか」と書いていますね。

國重 ええ。日本長期信用銀行は潰れなかったかもしれない。

大塚 私はそうは思わないな。株価と地価が下げ止まらない限り、金融機関全体の損失は変わらないから。

 極端に振れるのが日本人の特性だから、痛い目に遭うとみんな意気消沈しちゃう。もっとベンチャー企業とかの有望性を銀行が見定めるべきなのに、リスクを取りたくないから担保とかそういうところばかりに目を向けています。

 

大塚 イトマンを含めたバブルとその崩壊によるしっぺ返しに懲りてしまったのが現状ですね。

國重 銀行は貸し出しに慎重になっています。日銀の黒田東彦総裁が超金融緩和で金を流そうとしているけど、担保のないところには銀行は絶対に貸さなくなった。

大塚 日銀は簡単に言えば軽いバブルを作ろうとしているんだけど、まったくそういう状況にならない。バブルではある意味で小規模なイトマン事件が起こるのが必然なんだけど、そんな兆しもありません。

バブル崩壊から四半世紀が過ぎても銀行はまだ首をすくめている。銀行からどんどん金が流れるようになるのは、イトマン事件の記憶のない世代が中心になるまで待たないといけないんじゃないでしょうか。

國重惇史(くにしげ・あつし)
45年生まれ。東大卒業後、住友銀行(現三井住友銀行)に入行。イトマン事件の真相を綴った著書『住友銀行秘史』(講談社)はベストセラーに
大塚将司(おおつか・しょうじ)
50年生まれ。早大院修了後日経新聞に入社。エース記者としてイトマン事件など数々のスクープを掲載。退社後は作家・評論家として活動
楡周平(にれ・しゅうへい)
57年生まれ。慶大院修了後米国系企業に就職、退社後作家活動に専念。著書にイトマン事件をもとにした小説『修羅の宴』(講談社)など多数

「週刊現代」2017年2月4日号より