”賞味期限”が女を不機嫌にする

女の格差社会を生き抜く
夏目 かをる プロフィール

「女性の賞味期限」という呪いは解ける

ここで昨年大ヒットしたドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBSテレビ)のワンシーンに、多くの女性達に勇気を与えてくれた言葉が光る。

石田ゆり子が演じたアラフィーの百合が、17歳年下の男性から好意を抱かれる。それを知った若さだけが全ての女性・五十嵐の「50にもなって若い男に色目を使うって虚しくなりませんか」という非難にこう答えたのだ。

<あなたは、随分と自分の若さに価値を見出しているのね。私が虚しさを感じるとしたら、あなたと同じように考えている人がいっぱいいるということ。今、あなたが、価値がないと言い捨てたものは自分が向かっていることなのよ。私たちの周りにはたくさんの呪いがあるの。自分に呪いをかけないで。そんな恐ろしい呪いからはさっさと逃げてしまいなさい>

 

17歳の年の差の百合と風見の関係は、くっついたり、離れたりの繰り返しの中から、やがて着地点を見つけていく。二人を隔てる年齢差が「呪い」なら、自分たちが勝手にその呪いをかけている。呪いと闘うのではなく、「逃げる」という誰にでもできる行為によって、楽になれる。

「女の賞味期限」を呪いと言い切る石田ゆり子の、毅然とした美しさも印象的なシーンだった。

「呪いから逃げろ!」とは、なんて救いのある言葉だろう。では「女の賞味期限」という呪いから逃げた先にあるものは何だろう。

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かつて女性達は呪いから逃げようとせずに「オバサン」になることを受け入れていた。もちろん今でも自らを「オバサン」と称する女性もいる。だが経済力を持ち、自立する女性が増えると、年齢を重ねても見た目も感性も若々しく、生き生きとした人生を送りたいという願う傾向が強まった。老いることを早めずに「成熟」を求めていくうちに、やがて、「大人のいい女」志向の機運が高まっていった。

そんな成熟した「大人のいい女」になりたい女性に向けて、人生相談にも定評のある美輪明宏氏は、芯の強さと内面の豊かさ、そしてエレガントな女性になるために、主にヨーロッパ映画の女性たちを手本にするよう指南した。「映画の世界には大人のいい女のヒントがたくさんあるのよ」と。

では成熟していく女性の手本が、シネマの世界やヨーロッパ女性に限ったことだろうか。いえいえ、日本でも私たちのロールモデルになってくれる大きな存在がある。

年齢を重ねても、女性として、人間としての誇りをもって、人生を豊かにしていく女性の生き方が確かに存在する。それが“芸者の粋”だ。

実は私は、2000年前後に、踊りの名手で元新橋芸者ナンバーワンだった女性のミニクラブで週に2回ほどバイトをしたことがある。そこはお座敷が終った後に、二次会用の店として80年代にできた店だった。が、当時は、直接店にやってくるお客様も多かった。