古い慣習にしばられた「音楽業界」が変わるために必要なもの

クラウドファンディング、チケット問題…
現代ビジネス編集部 プロフィール

チケットの転売問題の解決に向けて

——チケットの転売問題についてどう考えていますか?

宇野 2016年8月、音楽業界がアーティストと共同声明というかたちで意見広告を大きく出していたけれど(読売新聞と朝日新聞に全15段で掲載)、チケット転売問題で困っているアーティストって実はほんの一握りだよね。8割方は会場を満席にするのが精一杯だから。

 ただ、これは切実な問題ですよ。時々「転売は市場原理だから仕方ない」と言う人もいますが、それはまったく物事の本質が見えていない発言だと思います。不正な手段で買い占める人によって市場が歪められること、それによって適正な機会が奪われることが問題なんですから。ひどい人だと転売だけで月5000万円も売り上げている人もいる。

たとえば、「なかなか予約が取れないレストランの8000円コースを、その予約の権利を大量に持っている人に2万円を払って食べる」っておかしくないですか? 楽しんだ本人が払った金額は、そのままつくり手に還元されるべきでしょう。でも、僕は転売問題の解決は難しいとは思っていないんです。

宇野 チケットゲッターを摘発する?

 基本的にはテクノロジーを使った解決策です。電子チケットなどで個人認証をガッチリかけることは可能ですからね。実際、「EMTG」や「tixee」などスマホを使ったシステムは開発されていて、それを導入しているアーティストも徐々に出てきている。あとはチケットを買ったけど都合が悪くなった人のために、公式なリセールサイトも当然必要になるでしょう。

で、ひとつ僕が物申したいのは、e+(イープラス)やローソンチケットといったプレイガイド。あれ、発券のときにシステム手数料を取るじゃないですか。

宇野 うん、なかなか高いよね(笑)。

 まあ、取るのはいいんです、ビジネスですから。でも、「システム手数料」なんだからそういうシステム開発にもっと還元してほしいんですよ。

宇野 たしかにね。あと、転売はチケットの定価にも原因があるよね。もともと、海外に比べて日本のライブエンターテインメントは相場が安いんです。まあ、海外が高すぎという見方もあるけれど……。

ともかく、転売問題が起こるほど行きたい人が多いなら定価を上げればいいのに、と普通は思うよね? それでもチケット価格が据え置きなのは、「演奏権料」の問題が関わっているから。チケット金額を上げるとJASRACに納める演奏権料の金額もはね上がり、結局儲からないからです。

 これまでのライブにおける著作権使用料は、チケットの一番高い値段と安い値段の平均値が基準でしたからね。10万円のプレミアムチケットを発売する一方で格安のチケットを用意しなければならなかったりした。

宇野 もちろん、AIR JAMみたいにあえてチケット価格を抑えてブランディングしている場合もあるし、ファンの年齢層が高くないアーティストのライブでチケット2万円は無理があるかもしれない。

けれど、高く売れても胴元が儲からないJASRACのシステムにはメスを入れないといけないと思うよ。

 ここに関しては現状で改善が進んでいるようです。2017年はチケット価格も流動的になっていくと思います。とにかく音楽業界はこれまで慣習にしばられすぎていた。音楽自体はどんどんおもしろく刺激的になっているので、それを支える枠組みも更新されていってほしいと思いますね。

宇野 うん。10年代初頭にこういう公の場で柴と音楽の話をする時は、アイドルやボカロの話が中心で、洋楽も邦楽も思いっきり入れ込めるアーティストや作品が少なくなってきて、自分もそろそろ潮時かなって思っていたんだけど(笑)、ここ数年、音楽の聴き方の過渡期や一時的なブームの淘汰を経たことで、海外も国内も音楽がまた急激におもしろくなってきた。こういう機会も増えていくといいね。

 そうですね。今日はありがとうございました!