古い慣習にしばられた「音楽業界」が変わるために必要なもの

クラウドファンディング、チケット問題…
現代ビジネス編集部 プロフィール

音楽の「好き/嫌い」と「いい/悪い」

——宇野さんのツイッターで「いい」と評されていた音楽を聴いてみると、あまり好きじゃなかった……ということがあります。「これがいい」と言われている音楽は多少ガマンしてでも聞いたほうがいいのでしょうか?

宇野 うーん、これはいい質問ですね。

僕らが音楽雑誌の編集をやっていた時代までは、「これがいい」がよく機能していたんですよ。誰かが「いい」と言っているのを耳にして、「はたして本当にいいんだろうか?」と疑いつつ、それでも少ないお小遣いから買った以上「よくなるまで聞く」。

するとその向こうに大きな世界が待っていた、ってことがちゃんと起こっていたんです。よくわからないながらもちょっと無理して聴き続けることで、いやらしい言葉だけど、リテラシーが上がっていくんだよね。もちろん、最終的に好きになれないこともあるよ。

でも、なぜ好きじゃないのかを考えることで、逆に好きなものが見えてきたりもするでしょう? 最近ね、みんな「好き/嫌い」をすぐに判断しすぎなんです。

 「好き/嫌い」をすぐに判断しすぎ。というと?

宇野 そもそも批評は「好き/嫌い」ではなく「いい/悪い」を判断するものです。でも、いまは「いい/悪い」を提供する人が減っているから、そのとき自分が感じる「好き/嫌い」のみで判断してしまう人が増えてしまった。

自分が高校生の頃の話をすると、正直、ゴダールの映画なんて、はじめはわけがわからなくて、ただ退屈なだけじゃないじゃないですか。でも、「これがいいらしい」と信じて見続けるうちに作品の持っているモードや波長と自分の合わせ方がわかってきて、それがぴったり合った瞬間にいろんな扉が開いていく。

文化ってさ、そうやって吸収して「好き」になっていくものなんだよ。別に万人がそうする必要はないけれど、少なくとも音楽や映画が好きな人には自分にそういう負荷をかけてほしいです。そっちの方が、最終的には絶対楽しいから。

 おっしゃるとおりですね。

僕はあえて「好き」に言及しますけど、変な話、ジャスティン・ビーバーも僕らも等しく「試されている」と思うんです。

宇野 試されている? 

 ピコ太郎はジャスティン・ビーバーがツイートしたから大ブレイクしましたが、そのことは、実はピコ太郎だけでなくジャスティン・ビーバーにもプラスに作用した。つまり、彼は「おもしろいものを見つける人」としての評価を上乗せしたってことなんですよ。

宇野 ああ、数年前にきゃりーぱみゅぱみゅを紹介したケイティ・ペリーも同じだよね。

 その人の「好き」に対する「いいね」の波紋がどこまで飛んでいくか。これが、いまの時代の影響力というものだと思います。

ツイッター以前は可視化されなかった影響力がいまやリアルタイムで見られるようになり、しかもメディアではなく個人が担うようになった。

これはどういうことかというと、僕が「オススメです!」と言ったものが周りに響かなかったら、僕のプロップス(信頼・評価)が下がるわけです。

宇野 なるほど。SNSに参加している以上、規模が違うだけでジャスティンも柴も「好き」と影響力が試される面では同じってことだね。