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J-POPの現在と未来〜邦楽育ちのアーティストの行方

メディアが抱える課題を徹底討論!
現代ビジネス編集部 プロフィール

雑誌の失速によって失われた「出会いの場」

宇野 さっき、ウェブメディアは文脈を構築する力が弱いという話があったじゃない?

じゃあ雑誌はどうかというと、昔はレコード会社から発売数ヵ月前に音を聴かせてもらって「どう売ろう?」って打ち合わせをしていたのが、いまはただ世の中の音楽を解説する側になっちゃったよね。

「時代をつくる」存在ではなく「時代についていく」存在になってしまった。

 雑誌が市場を失うのと平行して、音楽関連の出版ではムックが増えましたよね。アーティスト1人に焦点を絞って……。

宇野 ああ、そうね。ムック単体だけじゃなく「雑誌のムック化」も増えたし。

 たとえば『ぴあ』はかつて情報週刊誌として一世を風靡したけれど、インターネットによってあっという間に市場を失ってしまいました。その『ぴあ』はいま、矢野顕子を特集した『やのぴあ』のように、アーティスト1冊のムックを出す方向にシフトしています。これって当然、ファンからのニーズは高いからある程度は売れるんですよ。ただ、ファンの外に届かないんです。

宇野 偶然の出会いがないからね。

 我々がいたころ『ROCKIN’ ON JAPAN』は発行部数10万部以上を誇っていました。それは、たとえば表紙の小沢健二に惹かれて買った人がたまたまボアダムスのインタビューに出会えるような、ある種の音楽ファンのコミュニティに結実していたと思います。

宇野 そうそう、コミュニティメイキングの機能を持っていた。

 でも、アーティストごとにつくるムックも、ウェブメディアやオフィシャルホームページも、出会いの場としてのコミュニティメイキングの機能は非常に持ちづらい。そのコミュニティの喪失に対しては、なにかしなきゃという気持ちはあります。

あと、もうひとつ個人的な課題意識としては、『ヒットの崩壊』でも書いた「ロングテール(誰でも音楽を発表できるようになったことで生まれた広大なニッチ市場)」と「モンスターヘッド(少数の圧倒的勝者)」の二極化。この二極化が進む時代に日本のポップ・ミュージックがどう対抗していくか、その策を見いだしたいですね。

 

宇野 課題意識で言うと、僕の場合は日本における洋楽状況です。チケットが売れないから、ビヨンセやリアーナのようなレベルのアーティストでも単独来日ライブがなかなか打てないんですよ。

海外のトップ・アーティストがもはや日本では見られない時代に入って久しい。それってつまり、武道館にビートルズがやってきた1966年よりも前の時代に戻るようなものでしょ?

 たしかに。

宇野 それはなんとかしなきゃ、とビジネス抜きに使命感を持っています。……じつは、ちょっと前までは「もうしょうがないのかな」と半分諦めていたんだけど、最近の洋楽があまりにもおもしろくて。「回路をつないだら電流が通る」って確信はあるから、なんとか洋楽を日本に紹介する方法を構築したいですね。

<後編はこちら「古い慣習にしばられた「音楽業界」が変わるために必要なもの」>