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J-POPの現在と未来〜邦楽育ちのアーティストの行方

メディアが抱える課題を徹底討論!
現代ビジネス編集部 プロフィール

邦楽育ちのアーティストはどうなるか?

宇野 『ヒットの崩壊』の中で、柴は邦楽にしか影響を受けていないアーティストを肯定的に捉えているよね。僕は、洋楽の影響を受けていないアーティストをなかなかおもしろいと思えなくて……。

とはいえ、「邦楽の影響しか受けていない」と言っているバンドが影響を受けているバンドは、おそらく洋楽の影響を受けている。だから、クオーターみたいなものかなと思うんだけど。

 そうですね。

宇野 で、さらにそこから「『邦楽にしか影響を受けていないアーティスト』の影響を受けたアーティスト」が出はじめているのを見たりすると、「やっぱりしんどいんじゃない?」って言いたくなっちゃう。過度にガラパゴス化すると、生物学的にもおかしくなっていくじゃない? 下手したら絶滅したりさ。

くるりみたいなバンドが20年のキャリアを踏まえて新しいことをやり続けている一方、ゼロ年代以降に出てきた邦楽由来のバンドはきつくなってきたんじゃないか、たとえば、いきものがかりの「放牧」はその象徴なんじゃないか、と思うところもある。

 僕は、いきものがかりが邦楽にしか影響を受けていないからすばらしい、と言うつもりはありません。彼らがおもしろいのは、日本の歌謡曲の系譜を引き継いでいるところです。

宇野 へえ。どういうこと?

 いきものがかりはゆずのフォロワーとして活動をはじめましたが、10数年前、ゆずの直接的なフォロワーとして活動していたアコギ弾き語りデュオはもっと沢山いた。

それらが消えていった一方で彼らが残ってきた理由は、ゆずだけでなく、永六輔さんや中村八大さんにまで遡る日本の邦楽——「歌謡曲」の歴史を掘り下げてきたから。その歴史がいきものがかりには蓄積され、影響を受けているんです。だから「放牧」も、おそらくまた別の影響源を探すためのポジティブなものとして受け止めています。

もうひとつ、くるりと同世代の氣志團もいい例です。大ヒット曲『One Night Carnival』の路線のままでは5年ももたなかったでしょうが、その後綾小路翔はDJ OZMAでいち早くK-POPを取り入れたり、氣志團万博などを通して世代とジャンルを超えた交流を行ってきたことで長く残るアーティストになりました。

 

宇野 つまり、同時代の米英中心の洋楽にこだわらず、他の時代・ジャンルとハイブリッドすれば長く残る音楽になるんじゃないか、と?

 そうです。ひとつの畑で毎年作物を育てようとしても、栄養を与えなければ数年で土地は痩せてしまう。ですが、「栄養は洋楽、すなわち英語圏のロックやポップ・ミュージックだけじゃない」ということです。

たしかに90年代まではアメリカとイギリスだけがポップ・ミュージックの潮流の大半を作っていましたが、いまは違う。

たとえばブラジルのミナス音楽や、インドネシアのファンコットのように、その土地に根付いたおもしろい音楽シーンは世界中にあります。いまの時代、ファンコットやボリウッド(インドの映画産業の中心地ボンベイ×ハリウッドの造語)音楽を掘り下げてJ-POPと融合するアーティストがいてもいいでしょう。

もしくはアニメやゲームなど、別のカルチャーからの刺激を音楽に昇華するアーティストも多いと思います。

宇野 なるほど。BUMP OF CHICKENやRADWIMPSにはもともと洋楽の素養もあったけど、彼らはある時期から意識的にほかのジャンルとくっつくようになったもんね。