『蛇にピアス』から14年、2児の母・金原ひとみが描く「姉妹」の形

新作『クラウドガール』インタビュー
金原 ひとみ プロフィール

―スナチャを好む杏は、人の人格は時間の経過とともに変化していくものだという、不連続性の感覚が強いですね。そこが新鮮でした。

杏の場合は極端ですが、実際人ってそういうところがありませんか? たとえば恋人と喧嘩した時、「あの時ああ言ったじゃないか」と言われても、そんな言葉、無意味極まりないと思ったりしますよね。そういう、人の不連続性は積極的に認めていくべきなんじゃないかと思います。

今はSNSやインターネット上でみんながいろんな情報を発信し、それぞれ多面性、多様性を表現できます。一本筋の通った信念を持って生きているのが人間だ、という固定観念が変化し始めていると、多くの人が感じているのではないでしょうか。

 

―その話はタイトルにある「クラウド」という言葉にも繋がりますね。本作においてこの言葉は、杏が抱く心が曇る感覚を指しているほか、ネット上でデータを保管するクラウドの意味もあります。

〈私たちは巨大なデータベースと共に生きていて、もはやそこから決定的な嘘も、決定的な真実も捉えることができない〉と物語終盤で表現したように、同じ現実でも、どのフィルターを通すかで見え方は変わってくるものだと思っています。

話の中でも、ある事件に関して姉妹の記憶が食い違いますが、どちらかが間違っているというわけではなく、それぞれがそれぞれの真実にたどり着いているとも言えます。

インターネットやSNSが広がって、今自分たちは世界の捉え方が変わる転換点にいるのだと思います。そこで自分をどう守ったらいいのか、その手がかりとなる小説を書いていきたい。今回『クラウドガール』で掴みかけた気がするので、次はそこによりコミットした書き方ができるかな、と感じています。

(取材・文/瀧井朝世)

週刊現代』2017年2月11日号より