「移民の大統領夫人」はトランプ政権にとって不都合な存在?

メラニアはアメリカの「母」になれるか
渡辺 将人 プロフィール

1つは、「家族介入」問題だ。トランプはブッシュ家とクリントン家の「家族支配」を批判して、非職業政治家として勝利した。そのトランプが自分のファミリーで側近を固めれば、新たな「家族支配」の再生産になる自己矛盾がある。

イヴァンカ・トランプは、大統領夫人はメラニア1人であって自分が大統領夫人の代わりとはおこがましいと否定しているが、夫のジャレッド・クシュナーが大統領顧問に起用されている。司法省は「反縁故法」に抵触しないとの見解を示した。

イヴァンカ・トランプと夫のジャレッド・クシュナー〔PHOTO〕gettyimages

だが、「反縁故法」云々の法的問題以前に、身内を公職に置くデメリットもある。クリントンもヒラリーを正式な首席補佐官にしたがらなかった。首席補佐官は政権支持率が下がったときに責任をとる立場だからだ。大統領が夫人を首にするわけにはいかない。

トランプもよほどの失態でないかぎり身内のクシュナーの首は切りにくい。家族にポストを与えることはリスクでもある。今後もクシュナーはあまり目立たない形で大統領に影響を与えるはずだ。首席補佐官のプリーバスが何かあれば責任をとる役目だ。

ただ、「家族に準じる近い側近」をホワイトハウス内に抱えることは、家族が目立たない形で大統領に影響を与えるベストの方法ではある。

オバマ政権で8年間上級顧問としてホワイトハウスに居座った、前述のバレリー・ジャレットがそれに該当する。ジャレットはオバマ夫妻の親友にしてホワイトハウスの影のドンであり、日米首脳会談など専門外の外交の場にも同席することもあれば、大統領選挙に関する政務判断の手綱も握っていた。

クシュナーは大統領の娘婿である。トランプにとっても、この距離感がほどよいのかもしれない。クシュナーは事実上のトランプ陣営の選対本部長で、政権移行の人事にも深く関わっていた。大統領との近さの点では、トランプ政権のバレリー・ジャレットになる条件は備えている。

 

メラニアはアメリカの「母」になれるか

「トランプ流」をめぐるもう1つの問題は、大統領夫人はロイヤルファミリーのようなもので、公邸に住むのが「仕事」だという批判だ。アメリカの「母」であってもらう必要がある。こうした象徴性はむしろ共和党のほうが重視する(拙著『アメリカ政治の壁』)。

メラニア夫人がアメリカ全体の「母」である前に、息子の母であることを就任後も優先し、ニューヨークの自邸に住み続けることには微妙な表情の共和党関係者は少なくない。

そもそも大統領の子どもはワシントンの学校にすぐに転校するのが風物詩だ。しかし、米誌US Weeklyなど一部メディアは、メラニア夫人はニューヨークに住み続け、ホワイトハウスには引っ越さない可能性もあると関係筋の話として伝えている。

就任式後は表舞台から雲隠れのメラニア夫人だが、バロン君の教育はニューヨーク残留の口実ではとの厳しい見方まである。“反移民ポピュリズム”のトランプ政権にとっては「不都合な存在」の夫人が、何かと目立つことは好ましくないからだ。

今回の中東・アフリカ7ヵ国からの入国禁止措置騒ぎでも、さっそく夫人に飛び火している。メラニア夫人を担当したことがある移民弁護士が大統領の入国禁止措置を公然と批判したほか、大統領令に反対するカリフォルニア州の民主党州議会議員が、対抗措置として、夫人の移民記録公開を求める動きを起こしている。

メラニア夫人は2001年に永住権(グリーンカード)、2006年に市民権を獲得しているが、結婚前の1996年にビザ無しでの不法就労が疑われ、選挙中も一時話題になった。

「移民の大統領夫人」は、トランプ政権にとっては扱いが難しい存在になるかもしれない。