「移民の大統領夫人」はトランプ政権にとって不都合な存在?

メラニアはアメリカの「母」になれるか
渡辺 将人 プロフィール

閣僚にさせることは法的に難しかったが、当初そのことを知らなかった政権移行チームはヒラリーを教育長官など軽量級の閣僚に押し込もうとしていた。紆余曲折の末、合法でなおかつ政治的にも安全と思われた医療保険制度改革のタスクフォース座長になった。

しかし、タスクフォース座長が「安全」というのは間違いだった。政権の経済チームとの仲違いや共和党からの総攻撃にまで発展する渦を巻き起こしたからだ。

ベンツェン財務長官ら経済チームは財政赤字削減を優先し、ゴア副大統領は行政改革を優先すべきだと主張し、ヒラリーは医療保険優先を主張した。

クリントン大統領は妻のヒラリーの味方をしたが、政権は医療保険制度改革に一丸ではなかった。「景気対策と中間選挙を捨ててでも医療保険優先」で一致していたオバマのホワイトハウスと対照的だった。

大統領の家族が絡むと閣僚や側近が気兼ねして発言しにくくなり、政権内に見えない不公平感への反発が渦巻き、チームワークを乱しかねない。

歴代の大統領に仕えてきたデービッド・ガーゲンは、クリントンのホワイトハウスに着任し、マクラティ首席補佐官に意思決定系統を説明してもらったさい、強い衝撃を受けたという。

マクラティの説明では、最上位に大統領以外に副大統領とファーストレディが同等に鎮座し、「3人で重要な決断を下す。これがクリントンのホワイトハウスのやり方なので慣れてくれ」ということだった。

しかし、この指揮系統と責任が不明確な組織運営は行き詰まった。

 

支持率安定のミシェル型

一方、ミシェル夫人は、ローラ・ブッシュのように政権や大統領の支持率と一蓮托生でもないし、かといってヒラリーのように大統領と「シーソー関係」でもなかった。

ミシェルは良き妻であり母である伝統的大統領夫人でありながら、ハーヴァード大学ロースクールを経て弁護士になったキャリア女性の混合路線だった。

キャリア女性でありながらミシェルはヒラリー型にはならなかった。それはオバマ政権が、大統領夫人や大統領の親族を党派的な政争と関係する政治課題の旗ふり役にさせることを避けたからだ。

ミシェル夫人〔PHOTO〕gettyimages

大統領夫人が前に出て政権の目玉の政策を動かし、党派的な争いの前線に出ると、政権の安定を損ない、ひいては政権の政策実現や大統領の再選に影響を与えるおそれがあると、オバマ政権の首脳部は、クリントン政権の前例に学んだ。

そこで、ミシェルには一歩引く形で、政権の目玉政策や外交にどんどん口を出すというスタイルは控えてもらったのである。

ミシェルはバレリー・ジェレットという分身的な首脳スタッフを抱えていたので、ミシェルの意向はジャレットを通じて相当程度政権に反映されていたともいえる。しかし、極力サブスタンシャルな政策への関与を避け、食育や教育問題に取り組んだ。

そのため、ミシェルの支持率は、大統領や政権と一蓮托生的に連動もせず、かといって政権アジェンダの前線に出て党派抗争の当事者になっているわけでもないので、乱高下もしない安定型となった。

また、政権も親族の介入による混乱は生じなかった。