そんな時に、「本を書いてみよう」とふと思いました。私の全ての体験と、その中で私が感じたことの全てを、文字にして全部吐き出したら楽になるのではないかと考えたのです。
最初は全く書けませんでしたが、しばらくしてから自分の子供時代を見ているような気分にさせられる子供たちに何度か出くわす機会があり、「私の気持ちを整理するためだけじゃなくて、あの子たちのためにも役に立つ本にしなければ」という思いが強くなっていきました。
それだけではなくて、大人から見たときに、分かりたくても分からない、その世界観を少しでも感じてもらえるようなものにしなければ、と思うようになったのです。
それまで本どころか、文章もまともに書いたことがない私にとって、突然本を書き出すというのは並大抵のことではありませんでした。情報を整理することもできず、最初は無駄にフラッシュバックする記憶が頭の中に飛び回るばかりで、何を書けばいいのか分かりません。
けれどとにかく、書き続けなければと、片言のまま文章を書き連ねて、だいぶ進んだら最初の方を書き直して、また書き進めては前の文章を書き直していく作業を繰り返しました。とにかく分かりやすく、読みやすいものを書きたかったからです。
本を書くなら、全国、出来れば全世界の人に読んでもらえる本にしなければと思っていました。なぜなら、本を読んでくれた7人の理解ある人たちがいても、3人の本を読んでいない理解のない人たちがいれば、その3人が子供たちを傷つけることになります。
『見えない障害』のことを知ってもらうためにも、私はこの本を、一人でも多くの人に読んでもらえる本にしなければと思うようになりました。だから何十回も何百回も書き直しを繰り返しました。
ありがたいことに奇蹟が重なり、私は運よく、大手(らしい)の講談社から本を出してもらえることになったのです。
実を言うと私は多少常識のない人間なので、『講談社』という名前は知っていたものの、古い雰囲気の名前から「老舗のなんか古臭い、細々とやってる出版社なんだろうなー」と思っていたのです……人も会社も名前で判断してはいけませんね……本当に。
とにかく、偶然と奇縁が重なって、運よく編集さんのお眼鏡に適うことができ、私は『COCORA~自閉症を生きた少女~』というタイトルで、自伝的小説として、自分の歩んだ人生を刊行できることになりました。
本は全部で3巻まで出すことになっていて、今回1巻と2巻が同時刊行です。
そして、今回は前代未聞のチャレンジをすることになりました。担当編集者の提案で、『1巻の全編』の内容を、電子書籍版で2週間の期間限定で、『無料配信』させてもらうことになったのです。ただし、書店の書籍は有料ですよ。『1巻の電子書籍版のみ、1月27日~2月9日まで2週間無料』なので、お間違いないように。
講談社内でも、新刊を無料配信というのはあまりやったことのない企画だそうです。私も最初は戸惑いましたが「どうせ新人で3巻出すなんて前代未聞やし、もう一つ前代未聞なことをしても面白いよねー」とOKしました。
これで、一人でも多くの人に読んでもらいたいという願いも叶います。チャレンジ精神旺盛の担当さんに感謝です。2巻目は有料ですが、1巻を読んだらきっと2巻も読みたくなってもらえると信じています。
自分で言うのも何ですが、私の人生は一言では書けないぐらい奇想天外なことばかりなので……
本の中でお会いできるのを楽しみにしています。
私の名前は、天咲心良。自閉症スペクトラム障害とともに生きています。私が自閉症スペクトラム障害と共に歩んだ日々を、『COCORA~自閉症を生きた少女~』の中に綴りました。
少しでも多くの人に、この障害のことを知ってもらえれば嬉しいです。