子殺しの翌日、「鬼畜夫婦」は家族でディズニーランドへ行っていた

ルポ・足立区兎用ケージ監禁致死事件
石井 光太 プロフィール

残された子供たちの「その後」

このように事件の経緯を見ていくと、夫婦に対して次のことが言えるのではないか。

・親が不遇な幼少期の体験から「養育」が何たるかをわかっていない。
・そうした男女が夫婦になることで家の混乱に歯止めがきかなくなる。
・祖父母も親同様(それ以上)にゆがんでいるので抑止力にならない。
・夫婦は家の混乱を抑えられないので誤った対処法(虐待)に走る。
・夫婦はそれを自分たちは正しいことをしていると信じている。

この事件は、最終的には児童相談所が次男の不在を察知して介入したということで発覚した。だが、この種の虐待事件は、実態がなかなか表に出てこない。それというのも、夫婦は幼稚さから友人がおらず、家庭という密室でそれをつづけてしまう。本人たちは本人たちなりに愛しているつもりだから、ちゃんと定期検診などに連れて行ったりする。それゆえ、なかなか虐待の実態が明るみに出ないのだ。

 

児童相談所の職員を取材すると、こうした養育ができない男女が夫婦になって問題を起こす例は、近年増えてきていると口をそろえる。ある職員は匿名で次のように語った。

「子供をチェックするだけでは限界があるんです。本当にチェックしなければならないのは、親なんです。親が子供を育てるだけの能力を備えているか。それは経済だけではなく、様々な良識という意味です。親は子供を産んで親になれるわけじゃないんです。子供を産んだって親になれない大人はたくさんいる。大切なのは、そういう『親』をどうサポートするかということなのです」

重要なのは、大人が子供を産んだからといって正しい親になれるわけではないという点だ。そしてその理由の多くは、彼らが生まれ育ってきた環境にある。

拙著『「鬼畜」の家~わが子を殺す親たち』では、虐待家庭を3代までさかのぼってその原因を究明した。おそらく虐待防止も、そこまで家系をさかのぼって要因を追求していかなければならないのだが、現実的にはそこまでは手が回らず、「子供の救出」にとどまってしまう傾向にある。

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足立区の事件は、事件が明らかになって両親は逮捕され、懲役9年(夫)と懲役4年(母)の刑が下された。だが、問題は残された子供たちである。こうした家庭の子供は児童養護施設で暮らすようになることが多いが、ある年月をこうした家庭で過ごした子供はどう生きていくことになるのか。

子供たちの「その後」はなかなか表に出てこないが、社会全体がしっかりと考えてサポートしていかなければならない問題だろう。