ただのデマが「ニュース」になり、世界を狂わせてしまう時代の恐怖

クリックひとつで一触即発!?
森田 浩之 プロフィール

トランプの嘘はどこまで計算だったのか

ドナルド・トランプは、あまりにフェイクな候補者だった。

「メキシコ国境に壁を造る」だとか「イスラム教徒のアメリカへの入国を禁止する」といった破天荒な公約を数多くぶち上げただけでなく、フェイクな事柄を語り続けた。

たとえば、選挙戦中にトランプは少なくとも以下のことを言った。

テロ組織ISは、バラク・オバマが設立した。地球温暖化は中国のでっちあげだ。9.11の同時多発テロの後、ニュージャージー州のジャージーシティで何万人ものイスラム教徒が歓喜の声を上げているのを私は見た……。

共和党予備選のライバル候補については、いささか込み入った陰謀論を展開した。

テッド・クルーズの父親は、ジョン・F・ケネディの暗殺に関与していた……と。

〔PHOTO〕gettyimages

トランプはフェイクニュースの王者ともいえる。彼は事実をごまかしているわけではない。口にしているのは、調べればすぐにフェイクとわかるものなのだ。

こうしたフェイクを、まさに口から出任せに言いつのるのは、いったいどういうことなのか。こんなフェイクを口にしただけで選挙に勝てると思うほど、彼は単純な思考の持ち主なのか。

この点を解明できるのは、どの分野の専門家なのか。言語学? 心理学? あるいは精神分析? ともかく、トランプは一連のフェイクな発言をある戦略の下に行っているのかどうかという点については、なんらかの分析が必要だろう。

もしトランプがフェイクな発言を戦略的に行っていたとして、それが今回の大統領選の結果を左右していたとしたら? これから先、政治家はソーシャルメディアとフェイクニュースをさらに戦略的に使って、ものごとを自分に有利なように進めようとしないだろうか。

 

これまでソーシャルメディアは、草の根の市民運動を盛り上げてきたといわれた。エジプトでもウクライナでも、フェイスブックやツイッターは市民の運動に大きな力を発揮した。

しかし、もし体制側がフェイクニュースを戦略的にソーシャルメディアに載せるようになったら、どうなるだろう。ソーシャルメディアはメッセージを広める手段であると同時に、デマを拡散する手段にもなる。

かつては「お国」が実際には戦争に負けているのに勝っていると国民に信じさせるには、けっこうな手間がかかっていた。しかし今では、ネットに門番を置いて逆の見方や意見を削除し、その一方で自分の流したい情報を好きなだけ流せばいい。

以前なら学校教育からやらなくてはならなかった情報操作を、わずか数回のクリックでやれるようになるかもしれない。

政治学者のフランシス・フクヤマは、先ごろこう書いている。

「偽情報が独裁者の武器として利用されるだけでも十分に由々しき事態だ。……政治家は誰でも嘘をつき、真実をねじ曲げる。しかしドナルド・トランプは、異次元の嘘をついた」

これは疑いのない事実だ。わからないのは、トランプが「異次元の嘘」をどこまで計算づくでついてきたかだ。

その点を見極め、フェイクな世界に歯止めをかけなければ、私たちの将来は滅びる。

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