ただのデマが「ニュース」になり、世界を狂わせてしまう時代の恐怖

クリックひとつで一触即発!?
森田 浩之 プロフィール

核攻撃のきっかけになりえる?

首都ワシントン郊外のピザレストラン「コメット・ピンポン」で銃声が鳴り響いたのは、昨年12月4日の午後のことだ。

ライフルを持った男が押し入り、何発かを発射した。客やスタッフに被害はなかった。男は「大統領選のときに広まっていたクリントン氏の話を確かめに来た」と話したという。

思えば、不審な出来事が続いていた。「コメット・ピンポン」の関係者が異変に気づいたのは、大統領選の投開票日まで1週間を切った11月3日のこと。ネット上のサイトなどに店の名前が書かれ、「皆殺しにしてやる」などと脅迫めいた言葉が大量に投稿されていた。

事件のあった「コメット・ピンポン」 〔PHOTO〕gettyimages

発端は、内部告発サイト「ウィキリークス」が暴露したクリントン陣営の選対本部長ジョン・ポデスタのメールだった。ポデスタはこの店の常連で、オーナーと「店で寄付集めの集会をするから寄ってくれないか」などとメールをやり取りしていた。

これに対し、メールの文面にあった「チーズピザ」という言葉が、小児性愛者が使う隠語であることから、「ピザ店を舞台に児童売春をしている」という嘘の情報が出回りはじめ、ソーシャルメディアで広く拡散された。

投開票日前後には、店への嫌がらせがピークになった。従業員はフェイスブックで特定され、家族の写真をばらまかれて2人が辞めた。

 

ライフルが放たれるだけではすまなかったかもしれないケースもある。

昨年12月28日、パキスタンのムハンマド・アシフ国防相はフェイクニュースを真に受け、ツイッターでイスラエルへの核攻撃を示唆する投稿をし、批判された。

偽のニュースは20日にネット上に出回った。イスラエルの前国防相が、もしパキスタンがテロ組織IS(自称イスラム国)対策でシリアに派兵したら「核攻撃でパキスタンを破壊する」と語ったという。

アシフ国防相はこれを信じ、23日夜にこうツイートした。

「イスラエルの前国防相が核攻撃すると脅している。イスラエルは、パキスタンも核保有国だということを忘れている」

こっちにだって核兵器はあるんだぞ、と言っているわけだ。外交的には、かなり瀬戸際の局面である。

国防を預かる大臣が情報のソースさえ確認せずに、こんなやりとりをツイッターで気軽にできる時代は、相当に危うい。フェイクニュースは選挙の行方を左右するだけでなく、地域紛争、もしくは核攻撃のきっかけになりえる危険性があるということだ。

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