「SMAP本」5冊を一気読みしたら見えてきたもの

解散の寂しさを埋めようと思ったら…
西森 路代 プロフィール

成長物語を失ってしまった?

【SMAPと平成ニッポン~不安の時代のエンターテインメント~ 】

(光文社新書、2016/12/20) 太田 省一

著者の太田省一氏は社会学者で、かつて『中居正広という生き方』という本も出している。ほかにも、『紅白歌合戦と日本人』『アイドル進化論』など、テレビ、お笑い、アイドルについての著作が多数ある。

この本は、ファンの目線に寄り添って書かれていることを強く感じる。太田氏も本の中で「一ファン、一社会学者として」SMAPを論じたいと綴っている。

太田氏が、自分を「ファン」とはっきりと名乗るのには、理由があると思われる。この本の中には、

「かつてはアイドルとは思春期に熱病のように好きになる存在であり、それゆえ一過性のものに終わっていた。ところがいまやアイドルは、終わらないものになっている。アイドル本人もそうだが、ファンもまた思春期が過ぎ、やがて大人の年齢になっても変わらず応援し続けるものになった。SMAPは、そうしたアイドルの意味を更新したパイオニアなのである」

という一節がある。この見方を示したからこそ、社会学者で男性である著者が、堂々とSMAPのファンであると書けたのだとわかる。

もちろん、男性や社会学者が「ファンである」と言っていけないとはまったく思っていないが、こうした本を書くときに、あくまでもフラットな立場から書いていると示したいがために、「ファンではない」と断りをいれておく人も多いのではないか。

太田氏は「学者であるがファンでもある」と堂々と表明したうえで、私的な感想と社会学的考察をうまく入り交ぜて書いている。それは同時に、かつて存在した「熱病にかかったような思春期のファン」ではない、大人のファンがここにいる、ということの表明にもなっている。

さて、太田氏は本書の中で、アイドルには「成長物語」が必要で、それがなければ、アイドルがアイドルでなくなってしまうと綴っている。SMAPのように長く活躍するアイドルは「常に成長の余地を見つけていかなければならない」が、その成長の余地、「新しいフィールド」こそが、「社会」であったのではないかという指摘は、この本独自のものである。

阪神・淡路大震災や東日本大震災。天災や社会事件が相次いで発生し、「漠然とした不安」を感じる平成という時代に、人々がSMAPの歌を「自分たちの応援ソングとして解釈した」こと……それによって彼らは新しい「成長の場」を与えられた、ということだ。しかし、それは彼らにとって重荷ではなかったのか? と感じる人も多いのではないだろうか(前出のみきーる氏の発言のように)。

最終章では、解散の決まったSMAPについて「彼らは本当にやりきったのか?」(それは「エンターテインメントと平成日本社会の関係について切り開いた可能性は、彼らによって完全に実現されたのか」という意味においてである)と問うていて、同時に彼らに社会の不安と寄り添い、安心を与える「同伴者」としての役割を託し続けてもいいのだろうか、という戸惑いもうかがえた。そこには、一社会学者としての問題定義と、一ファンとしての愛情の視点が現れていたように思う。

ネットメディアが破ったタブー

【SMAPはなぜ解散したのか】(SB新書、2017/1/6)松谷 創一郎

<内容紹介>SMAPは解散する必要があったのか?「公開処刑」と呼ばれたSMAPの“謝罪会見”。テレビやスポーツ新聞などのマスコミは、これを批判することなく報道した。その背後には芸能界との強い癒着体質があり、ジャニーズ事務所は、旧い「義理と人情」の世界を生きている。国会議員も注視するように、これはグローバル化を目指す文化産業では、致命傷にもなりかねないリスクとなる。メンバーは今後どこに向かうのか。彼らのこれまでとこれから、そして日本のメディア、芸能界の構造を考える。

著者の松谷創一郎氏は『ギャルと不思議ちゃん論―女の子たちの三十年戦争』という著作があるライターだが、SMAPとの関わりでいえば、Yahoo!個人で「存続するSMAP、民主化しないジャニーズ――SMAP解散騒動の煮え切らない結末」や「テレビで「公開処刑」を起こさないための“JYJ法”――SMAP騒動から考える芸能界の将来」といった、SMAP関連の記事を何本も書いている。

この本が他の本とは明らかに違うのは、テレビ、スポーツ新聞、週刊誌によるSMAP報道を追い、「一連の騒動をマスメディアや文化産業の問題として捉えなおし」「SMAPを通じて日本社会の問題点を再考するもの」としているところである。

そのため、ほかの本には書かれなかった、<スポーツ紙のSMAP解散報道はどれも論旨が同じであったこと><テレビの報道はコメンテーターの「当たり障りのないコメントでまとめられた」こと><日本の芸能界や事務所に「義理と人情」を中心とした旧態依然とした体質が残っており、それが芸能界の労働問題(給与体系や、移籍についての慣習)につながっていること>とする考えなどが、率直に書かれている。