「SMAP本」5冊を一気読みしたら見えてきたもの

解散の寂しさを埋めようと思ったら…
西森 路代 プロフィール

見えない力」で集められた6人?

【SMAPと平成】

(朝日新書、2016/12/13) 中川 右介

<内容紹介>平成という時代と「SMAPの時代」とは、不思議なまでに合致する。平成の始まりとSMAP結成はほぼ同時だった。そして「平成の代を終えたい」と明仁天皇が宣言した直後にSMAPの解散が決まる。かつて昭和天皇が亡くなった数カ月後に大スター美空ひばりが亡くなったことで、人々は「昭和の終わり」を実感ように、私たちは今一つの時代の終わりを肌で感じている。バブル崩壊、大震災・原発事故、政権交代……平成とはいったい何だったのか。本書はその時代の歴史を、SMAPを前面に立てて概説する試みである。

次に出版されたのが『SMAPと平成』だ。著者の中川右介氏は、評論家、編集者、元・出版社経営者で、著作には、『月9』や『松田聖子と中森明菜』などがある。2016年だけでも、7冊も書き上げたという多作の人である。

昨年11月に発売された『月9』は、フジテレビの月9ドラマを、膨大な資料を掘り起こしながら、スポットを当てる部分を巧く取捨選択して書かれた労作だった。この『SMAPと平成』も同じスタイルで書かれており、雑誌をはじめとする資料を駆使し、そのときの政治状況や天皇家の動きと連動させて、平成とSMAPが奇しくもシンクロしている現象を読み解こうとしている。

特にこの本では、SMAPが結成される前夜から、結成当初、デビュー当時、そしてオリコン1位を獲得し、木村拓哉が雑誌ananの好きな男にランクインしたり、『SMAP×SMAP』がスタートしたり……と、日本の象徴となっていくまでの、1987年から1996年の出来事が中心に書かれている。

ここ数年のSMAPを振り返る書籍や特集記事は多いが、デビューからブレイクまでを中心に追った点がほかの本とは違う点であるし、SMAPが結成当初、どのようなスタンスで仕事を獲得していったか――ひとつ答えを明かすなら、それは、「ドラマや舞台のオーディションをどんどん受けること」であったと記されている――や、SMAPデビュー前夜といえる時代の「バブルに浮かれつつ、自粛するという奇妙な」社会的状況と、光GENJIの絶頂がありつつも次のアイドルが生まれていなかった、当時の「閉塞感」のようなものも知ることができる。

中川氏の見方として面白いのは、「平成という時代と『SMAPの時代』とは、不思議なまでに合致する」という多少のオカルトめいた部分を隠さないところである。それは、前書きの「『芸能』というものは、古代から神に近いところにある。芸能人のルーツは巫女であり、『舞踏』は宗教行事として発展したものだ」という指摘からもうかがえる。

つまり、SMAPの人気は戦略的に築かれてきたかのように見えるが、実は、何か見えない力、見えない縁で集まった5人(6人)が、そのときどきの空気を無意識に感じ取りながら得たものなのではないか……そう示唆している一冊ともとれたのだ。

この本に書かれている話ではないが、伝統芸能である能の舞台も、現実世界の人物であるワキと、現実世界を超えた存在であるシテによって演じられる。シテは、能面をつけて、神を演じる。現在の芸能においても、人間の目には見えない、世の中のうねりのようなものを体現するのが、スターではないかという見方を私自身も持っている。だからこそ、SMAPが選んだ「解散」という道も、本人たちの意思以外の何かに引っ張られているのではないかと考えてしまう。

自我をもったアイドル

【ジャニーズと日本 】

(講談社現代新書、2016/12/14) 矢野利裕

<内容紹介>日系アメリカ人ジャニー喜多川が送り出した少年達から50年。なぜここまでジャニーズ帝国は隆盛を極めたのか。国民的アイドルSMAPはいかにして生まれたのか?フォーリーブスから、たのきん、嵐、関ジャニ∞…まで。音楽性やショービジネスの視点で論じた、戦後日本の大衆文化史

『SMAPと平成』の次の日に出版された『ジャニーズと日本』を書いたのは、ほかの著者よりも若い1983年生まれの矢野利裕氏。前出の速水健朗氏とともに『ジャニ研! ジャニーズ文化論』を執筆、また『SMAPは終わらない――国民的グループが乗り越える「社会のしがらみ」』を2016年8月に出版している。ほかにも、共著で『大人アイドル プロフェッショナルとしてのV6論』にも執筆するなど、ジャニーズ関連の著作が多い著者である。

この本はSMAP論には特化しておらず、あくまでもジャニーズという芸能事務所全体について書かれたものである。ジャニーズが戦後の日本にどのような形で現れ、初期のフォーリーブスや、たのきんトリオといった人気グループの誕生を経て、その特色やノウハウがどうSMAPに受け継がれるかの歴史が、ジャニー喜多川の価値観とともに書かれている「ジャニーズ史書」である。

また、他の本と一線を画すのは、ジャニーズの音楽面について掘り下げているところである。SMAPで言えば、1990年代に流行した渋谷系のクラブカルチャーやフリーソウル的な音楽を取り入れたことで、彼らの音楽の独自性が形成され、それとともにグループが成長していった……と書くところは、1980年代生まれで音楽に明るい著者らしい視点である。

矢野氏は、この本の中で、ときおりアイドルと自我についても触れている。矢野氏によると、ジャニー喜多川は「アイドルは本来『自我』を表現する存在ではなかった」と考えているというが、それに反するかのように「SMAPは等身大の『自我』を表現することによって、むしろアイドルとしての人気を獲得してきた」とする。

本来は「自我」とは、アーティストが持つべきものとされていたが、それをアイドルが持つとはどういうことなのか……。本書では、それを論じることを第一のテーマにはしていないが、この点についてはもっと読んでみたいと思う部分だった。