関東とはスケールが違う!「関西の大金持ち」はこんなにおもろいで

歴史的風土が生んだエネルギー
週刊現代 プロフィール

「子供の頃から貧乏やったからね。いつになったらお金持ちになれるんやろかと、ずっと考えていましたよ。うちは島根で豚を飼っていましたから、近所にリアカーを引いて豚の餌にする残飯をもらって回っていたんです。

それで家に帰ったら、(残飯の)きれいな部分を取って、お母さんが私に食べさせるんです。そんな生活をずっとしていました。だから私、食い意地が張っているんです。腐りかけのものばっかり食べてきたから、今はちょっとでも古いものが出てくるとあの当時を思い出して、絶対嫌。

それで、お父さんが大阪に働きに行くことになって、家族全員で尼崎に引っ越したんです。大阪に来たら何かが変わると思ったんですけど、雨漏りする市営住宅で、家族9人でカラダを曲げて寝る生活でした」

川村氏は水商売の世界に入り、頭角を現す。北新地でナンバーワンホステスになると、銀座に進出し、ここでもナンバーワンに。銀座に店を構えた後、大阪に戻った。

「銀座には10年くらいおりましたが、大阪で知り合いに焼き肉屋をしてくれと言われて始めました。6店舗目までは比較的順調だったのですが、そこで狂牛病の問題が起きよった。そのうえ、店も放火されて、従業員にも給料が払えない。

私の運命も終わりやな、と思ったときに大阪・箕面の喫茶店で、ケーキ1個とコーヒーで2000円くらい取る店が流行っているのを目の当たりにしたんですよ。こっちは焼き肉食べ放題で1980円でしたからね。これや!と思って喫茶店を始めました。それがマダムシンコの始まりです」

もちろん、喫茶店も順風満帆ではない。当初は雇ったパティシエに散々わがままを言われたり、挙句の果てに辞められたりと大いに苦労した。だが、幼少の頃から培った負けん気が勝った。

「パティシエにいじめられるたびに『くそ、くそ、くそ、誰がカネ出してるねん』と燃えて、それで自分たちで作れるバウムクーヘンを選んだんです。だから今はあのときにいじめられたことに感謝していますよ(笑)」

「可愛げ」が一番大事やで! 

バウムクーヘンが売れに売れて、今や年商100億円を視野に入れる企業に成長した。先に紹介した川村氏の豪邸については、こんな味わい深いエピソードがある。

「家を建てようと考え始めたときに、銀行の人がここの土地の話を持ってきたんです。聞いたら、『600坪って、そんなん体育館やんか、そんなの無理やわ』って、言っていたんですよ。

ところが、お父さんが『ようやった、いいところ見つけた』と泣かはるんです。よくよく聞いたら、お父さんが関西に出てきたときに、(肉体労働者として)山を切り崩して開拓した土地らしいんです。

『お金持ちのために造成した土地に、まさか娘が住むことになるとは夢にも思っていなかった。こんなにうれしいことはない』って……。お父さんにそんなことを言われたことがなかったので、私も涙が出ましたね」

 

スイーツにも流行り廃りがあり、大ブームを引き起こした商品は飽きられがちだ。だが、バウムクーヘンにバーナーで焦がしたキャラメルをトッピングした「マダムシンコのマダムブリュレ」は今も売れ続けている。なぜか。

「それは日本の味やからです。これは高度成長期の味、青春の味なんですよ。私は子供の頃、バウムクーヘンに憧れていました。でも、食感が冷たくて、ちょっと気取っているようにも感じていた。私はブリュレ(プリン)が好きだったので、キャラメルを載せたらどうやろ?って。そこから生まれたんです。

青春の味といったら、最近、また焼き肉にハマっています。尼崎の出屋敷に50年行っている『味楽園』というお店があるんですけど、しばらく食べないとおかしくなる。尼崎と言えば、私たちの青春時代。だからこれを食べているとき、私はご機嫌さん(笑)。

昔は物欲も食欲も金欲も凄かったですけど、最近はそうでもありませんね。普通に買い物では好きなものを買いますけど、高いものを買うかと言えばそうでもありません。

でも1年くらい前、値札も見んと帽子とカーディガンを買ったら、想像より高くてヒョーっと驚きましてん。100万円。シャネルやで(笑)。そんなのは例外で、今は『欲』というよりも、祈るのは健康と事故がないことだけです。

あと、今度、三重県の100年続いている老舗の和菓子屋さんと組んで商品を開発しますので、それもよろしくお願いします」

ちゃっかり自分の次の商売を売り込むところもまさに大阪の商売人。この抜け目なさがビジネスで成功する要因なのかもしれない。そうして最後に、川村氏は独自の人間哲学を開陳してくれた。

「私は会社のトップでありながら、ろくに学校も出ていません。そんな私が常に言うのは、『人間として可愛げを持て』ということ。いろんな人間を見てきましたが、可愛げのない人間なんて、誰が相手にするんですか。たとえ、ええ大学を出たって、実社会で偉くなるかといったらそんなことはあらしません。

ナンバーワンになろうと思ったら、他人のヘルプが大事なんです。それには可愛げがないと。自分ひとりの力なんて、たかが知れてますから」