ハチイチ世代の旗手・山口絵理子が愛され続ける理由

新たな挑戦で見えた強さの秘密
山口 絵理子

─山口さんは、10年後、何をしていたいですか?

そう聞かれることがあるのですが明確には答えられません。哲学の軸はぶれないようにしたいですが、やることは1年1年のチャレンジの積みかさねで、そこで何を感じ、何をしたいと思うか、今の自分にはわからないのです。

すべてを決めてからではなく、まず動いてみることの大切さをこの本から感じ取ってもらえたらと思います。

─世界を駆け回り、時差を超えて働いていらっしゃいますが、体調管理のために気を付けていることはありますか。

山口:気を付けているのは、おもに次の5つです。

1.7時間睡眠
2.海外出張ではジムがあるホテルをえらぶ
3.家の近所を1時間ランニング
4.何もしない時間を1時間作る
5.快適な住空間を心がける

体力の低下は仕事の質の低下を招きますから、体力維持には気を使っています。一番気を付けているのは睡眠です。必ず7時間くらいは寝るようにしています。あとは体力作り。海外ではなるべくジムがあるホテルに泊まるようにしていますし、国内にいるときはランニングをしています。考えごとをしながらなんですぐに1時間くらい経ってしまいます。

それと何も考えない時間を持つことは大事にしています。仕事のネタはどこにでもあるし、メールはどんどん流れてくるし、自分をコントロールできなくなるようなこともあります。だから、ここから1時間は何も考えないようにしよう、という時間は意識的に設けるようにしています。

そのためには住んでいる空間がいかに快適かというのが大切で、そこにはけっこうお金を使っている気がします(笑)。

再び0から1を生み出す挑戦を

新たな挑戦の舞台はインドネシア・ジョグジャカルタ

─『裸でも生きる』シリーズとしては3冊目になりますが、過去の2冊(『裸でも生きる』『裸でも生きる2』)と今回の違いはどのあたりにありますか。

山口:会社全体で0から1を生み出す経験をしてきたのが大きな違いです。
起業当時はほとんど、私ひとりでやっていました。発注数を決めるのも、素材調達するのも、検品仕様書を作るのも私でした。今回は社内のさまざまな部署のメンバーが関わっています。

生産地にはスタッフが常駐するようになっています。開発以外のことはほとんど彼らがやってくれるようになりました。以前は山口絵理子個人の色合いが強いストーリーでしたが、今回はチーム・マザーハウスのストーリーになっていると思います。

─バングラデシュやネパールでの事業が軌道に乗ってきている今、新しい国に進出しようと考えたのはなぜですか。

山口:ひとつは、いまはスタッフのみんなががんばってくれてバッグやストールで利益が出ています。それを何に使うのか? と考えたとき、私には挑戦以外にあり得ませんでした。それを内部留保してしまうほうがみんなを裏切っているように思えるのです。
利益が新しい国を広げるために使われることは、マザーハウスのブランドとして何より大事だと思います。

それと、マザーハウスはいまでも新しいことにチャレンジしているんだと全社で感じたかったから。組織が大きくなるにしたがって創業当時の、0から1を生み出していた時代を知らない人が入社してきています。

その人たちは出来上がったマザーハウスに入ってきているので、当時の挑戦を「あのころのマザーハウス」という昔話としてとらえている気がしていました。彼らにマザーハウスブランドのDNAを伝えていくには、現在進行形で挑戦している姿を見せることがとても大事なことだと思ったのです。

─バッグで成功しているのに、まったく違うジュエリーを新製品に決めたのはなぜでしょうか。

山口:「途上国から世界に通用するブランドをつくる」というミッションのためには、バングラデシュのバッグブランドだけだと達成できないと思うようになっていました。アイテムがバッグひとつだと他の国となかなか仕事ができません。皮がある国は限られるからです。

だけどどの国にもその国なりの資源があります。他の国と仕事をするためにそれを生かした別なアイテムを打ち出さなくてはいけない。しかもそれはサブアイテムではだめで、バッグと同じくらいの市場規模がないと全社のリソースをかけられない。そうでないとみんなも納得しないと思います。

ジュエリーはバッグと同じ3兆円規模のマーケットですから、物流面も含め、スタートしやすいんじゃないかという考えはありました。