知るだに恐ろしくなるイスラム国「誘拐人質ビジネス」の闇

リレー読書日記
生島 淳 プロフィール

人生で読める本はあと何冊?

さて、今年50歳を迎えるにあたって、人生の読書計画について思いを巡らせるようになった。

人生で読める本は、あと何冊だろうか?

時代小説のシリーズものを読み始めると冊数は稼げるが、ボヤっとしていると年間100冊はなかなか難しい。そうなると、量よりも質を求めたい。

日本人として生まれたのだから、夏目漱石の再読、そして『平家物語』は読んでおきたい――そう思っていたところ、古川日出男の訳で「祇園精舎の鐘の声」が甦った。

この新訳、意気込みが凄まじい。なにせ「私はほとんど一文も訳し落とさなかった」と訳者が記すくらいだ。これは、ダイジェスト版の現代語訳とは一線を画している。

ただし、丁寧に訳すとかえって話が分かりづらくなるリスクを伴う。実際に「一の巻」では登場人物が入れ替わり立ち替わり出てくるので苦戦するが、読み進めていくと波に乗れる。

それは私が歌舞伎や講談に親しんでいることが幸いしたのだが、俊寛(歌舞伎と違って、かなり悪党)、平知盛、那須与一といった人物たちが登場し、これまで自分が接してきた作品とどんどんリンクしていく。

たとえば、歌舞伎の『義経千本桜』の「碇知盛」の台詞は、安徳天皇が入水する「先帝身投」にベースがあった。『熊谷陣屋』も同様。『平家物語』が現代につながる芸能の源泉であることを改めて実感した。

私の父、母の世代は耳を通して親しんでいたことを考えると、現代人にこの大叙事詩を読み通すのは難しいと思うが、一冊を手元に置いておき、気が向いた時に気に入った部分を読むので十分かもしれないと思った。読書にも「終活計画」は必要である。

週刊現代』2017年1月28日号より