親の介護にいったいいくらかかるか、ご存知ですか?

保険だけでは到底カバーできない
東田 勉 プロフィール

「認知症介護」は費用負担も重い

介護にいくらかけられるかは、親の年金額に左右される。では、親はどのくらい年金をもらっているのか。

厚生年金をしっかり払ってきた人は月15万6000円(2016年度)くらいと言われるが、これは厚生労働省のモデルケースで、男性が平均的な賃金で40年間働いていた場合だ。国民年金だけを受給している人だと、平均して月5万円余りしかもらっていない(2016年度の満額は6万5000円)。

したがって、国民年金だけを受給している人(農業や自営業で生計を立ててきた人)が要介護状態になると、すぐに困窮する。住む家や多少の田畑があっても、月5万円余りの年金では、生活保護受給者よりも手取りが少ない。当然、医療費や介護費を切り詰めなければ生活できない

わずかな年金しかもらえず、取り崩す貯蓄がない人にとって、施設入所のハードルは高い。施設入所が困難であれば、子ども世帯が仕送りをするか同居して生活の面倒をみる必要がある。

「在宅介護では、施設介護よりも費用がかからないのだろう」。そう考えて仕事を辞め、親の介護を抱え込む中高年は少なくない。そこでも多くの悲劇が生まれている。

在宅に限定された介護(独力での介護)は、リーズナブルだと思い込まれがちだが、とても危険だ。多くの場合お互いの関係が煮詰まって、介護者も被介護者も疲弊する。一度、離職した場合、再就職も困難を極める。このことも頭に入れておかねばならない。

もう一つ、在宅介護で行き詰るパターンがある。それは、認知症の在宅介護だ。

 

大同生命が制作した営業用のパンフレットによると、要介護2~3の場合、認知症が重度まで進行すると、在宅介護にかかる費用が約2・5倍になるという。要介護2~3でも認知症がなければ1ヵ月の在宅介護にかかる費用は2万9914円で済むが、認知症があると軽度で4万81円、中度で5万9161円、重度で7万4915円かかるという。

公益財団法人家計経済研究所が2013年に公表した調査データによると、要介護度が1以下でも認知症が重度だと介護費用は月5万7000円かかり、認知症が重度の人が要介護4~5になるとそれが月12万6000円に跳ね上がる。

これは、認知症があると常時見守りが必要になるなど人手がかかり、ショートステイやヘルパーの利用を増やさざるを得ないためだ。

介護保険は要介護度別の支給限度額を超えると超過分が自費になるが、認知症の在宅介護は想定外の出来事が起こりやすく、支給限度額を超えないとも限らない。必ずこれだけ増えるとは言い切れないがが、在宅介護にかかる費用が認知症の有無に左右されることは間違いない。

「介護が始まる前から、費用対効果のいい介護スタイルはどれか知ることができたら」とは、誰もが思うところだ。拙著『親の介護をする前に読む本』は、明らかにしにくい介護スタイルと費用の問題を推計している。

特に、「遠距離介護」「呼び寄せ介護」「介護離職」にかかる費用を学ぶケーススタディは、これから介護を始める人の参考になるだろう。