美人AV女優と呼ばれた女の絶望的な「その後」

リスカ、アル中…かける言葉が見つからない
中村 淳彦 プロフィール

空き缶と物が散乱するテーブル上にAV女優時代、3年前のデリヘル嬢時代の写真があった。写真はビールや醤油がついて汚れていたが、肥えた現在の姿からは想像もつかない、フェロモンを漂わせた色っぽい女性が写っていた。写真の彼女はヘアメークして綺麗にドレスアップされ、採用の難易度が高い現在のAV女優や高級キャバクラなどでも十分に通用する美人だった。

しかし、目の前の井上沙耶はタンクトップ姿、サイズが体型に合わずにお腹が膨れあがっている。ブス、醜いなどという形容詞を超えた状態で、左の二の腕から手首まで無数のリストカット痕があり、さらに脇の下の無駄毛は生やしっぱなし。そして、笑うと口元から見える歯は、ヤニが蓄積されて真っ黒だった。

黒い歯に私は息を飲んだ。目の前には、美人AV女優の絶望的な「その後」があった。

 

居候のきっかけは…

「リスカは、もう10年くらい前からとまらない。昨日もだし。彼氏がすごく冷たくてね。もう何ヵ月も不眠みたいな感じ。昨日も2時間しか眠れなくて、彼氏は『今日も帰ってこないかも』とか言ったの。キレて暴れちゃった。それで彼氏の前で暴れてリスカして血まみれ。まだ何時間かしか経ってないから、絨毯血でベトベトしているかも。でもさ、リスカはスカっとするのよ」

1人ではリスカはしない。誰かの前でするか、切って怪我をしてから誰かを呼ぶ。それは癖だという。

「この前は血まみれの状態でおまわりさんを何度も呼んだ。それで措置っていうの、おまわりさんに精神病院に連れて行かされて検査させられたよ。精神病院でいろんな薬をもらったけど、なにもよくならないよね。リスカ癖も治らない」

連続飲酒状態か。ビール缶を持ち上げると手が痙攣する。ゆっくりと口元に運び、手が缶を維持できずに中身がこぼれる。手の痙攣は不自然で激しく、自分では制御ができないようだった。

「そう、アル中。実は来週から入院なの、アルコール依存症だね。去年、風俗の仕事がダメになってから連続飲酒するようになって、しばらくして手がぷるぷる震えてとまらなくて、今では水も普通に飲めなくなっちゃった。汗はかくし、手は震えるし。こんなバカみたいに太ったのも、原因は全部アルコール。

デリヘルをクビになってから夜中から朝まで食べて飲んで、起きてすぐ飲んで、そんな感じ。クビになってから一週間で6キロ太って、まったく止まらなくて、今はプラス30キロ。もうどうしようもない」

自虐的なことを言いながら、膨れあがったお腹をぽんぽんと叩く。脂肪というより、風船のようで、おそらく自力では元の体型には戻せない。風俗に復帰するのは難しい。

「彼氏とは4年前から付き合って、なぜか続いているのね。最初に会ったのは、出会い喫茶。生活費を稼ぎに売春しに行って、こいつ金なさそうだなってのが第一印象。こいつ金ないだろうけど、良い人そうだから食事に行こうかなってのがキッカケ。どっか適当な居酒屋で酒飲んで、最初の日はそれだけで別れたのね。また次の日に歌舞伎町の出会い喫茶に売春しに行って、電話が鳴って、昨日会った男だけどって。それで番号登録した。

その日、売春で誰かとホテルに行って、朝方帰ったときに変なオヤジに絡まれたの。それで彼氏に助けてって電話した。当時、住んでいた部屋に呼んでエッチして、エッチが終わって昼頃に『帰る』っていうから、目の前でリスカした。そこからずっと一緒」