【ルポ】子どもたちが「神かくし」状態になっている一時保護の実態

本当に必要な「子ども支援」とは何か
慎 泰俊 プロフィール

1日の学習時間はたった2.5時間

食事を終えたら、すぐに歯磨きをして、その後また暫しの自由時間です。

その後、8時45分にチャイムが鳴り、職員たちは子どもに席に着くように促します。そして、8時50分から読書の時間が始まります。とはいっても、本を読んでいる子どもは一人もおらず、みな漫画を読んでいました。多くの子どもにはそもそも本を読むという習慣がないためです。本棚には数百冊の本がありますが、そのうち7割程度は漫画で、有名な漫画の多くが全巻揃っていました。

その読書の時間を終えたあと、平日には学習時間があります。1回45分の学習時間が3回あり、合間に10分間の休憩が入ります。学習時間といっても、学校の授業のようなことがされる訳では決してなく、それぞれが自分のレベルにあったプリントを解いたりするだけです。

「勉強がよくできる子どもで学力は学年マイナス1くらい。漢字をまともに読めない子どもが多い。中学生たちに小学生レベルの漢字テストをさせたら、50点を超えた児童は一人もいませんでした。ここで自信を喪失してもよくないので、予めテスト問題を見せておいて、それを解かせたりしていますが、なかなか大変です」

プリント学習にならざるを得ないのは、この一時保護所の職員が全ての子どもたちの状況に合わせて勉強を教えたりはできないからです。

学習時間は午前中で終了します。45分✕3、すなわち合計でたった2時間、読書の時間も合わせても2.5時間にしかなりません。この1日平均学習時間2.5時間というのは、全国の一時保護所の平均でもあります。

すなわち、よほどの場合を除き、一時保護所にいる間は学業が大幅に遅れることになります。とはいえ、それは「一般の子ども(何をもって一般とするかは難しいところです)」に比べてであって、一時保護所にやってくる子どもには不登校であるケースも多く、ここにきて数年ぶりに机について勉強をしたという子どももいるほどですが──。

職員たちから抜け落ちている視点

朝と昼の自由時間の間に、一部の職員が引き継ぎに入ります。事務室で20分程度で行われ、子ども一人ひとりの様子が細かに報告されます。

「Xが足が痛いと言っていたが、その後の様子を見る限り大丈夫そうだ」「おもちゃの取り合いでYとZが喧嘩をしそうになった。お互いの言い分はかくかくしかじかで、途中で鎮火したが、継続的に注意が必要かもしれない」「女子が髪の毛を縛らないでいる。もしかして若干色気だっているのかもしれない」といった具合です。

職員たちが子どもの状況を事細かに覚えていることに驚かされますが、私が何度も寝泊まりをしている児童福祉施設での引き継ぎとは何かが違うと思いながら参加していました。

何度か参加しているうちに、その違いに気が付きました。それは、引き継ぎで共有される内容が何らかのトラブルに発展しうる事柄に基本的に限定されているということです。子どものより良い成長や発育のために何が必要であるのか、という視点を感じることはできませんでした。

一部の職員が引き継ぎをしている間、保護所内にいる職員数は足りなくなります。そういった場合、職員は基本的に全部の場所を見渡せる場所に立ち、目を配っています。

一時保護所で子どもが自由時間を過ごすスペースには、ハサミはおろか、鉛筆のような先が尖ったものすらほとんど置かれていません。子どもが衝動的にそれらを凶器にしてしまうと大変なことが起きるためです。

この一時保護所では、およそ半分の子どもたちが精神安定剤を飲んでいます。これはここ数年の特徴で、発達障害や精神上の障害を抱えた子どもが2割ほどいます。その子どもたちは、コンサータやエビリファイといった薬を毎日服用しています。子どもによっては、体重に対してほぼ許容可能ギリギリの水準でのんでいます。

 

遊ぶ「紙の枚数」すら管理される

その後、13時半から体育その他の時間になります。体育館で運動することが多いですが、場合によっては外のグラウンドに出られることがあります。出られるのは職員数に余裕があり、子どもが逃げ出したときにすぐに追いかけられるような場合だけです。

15時からはおやつの時間で、また食堂に戻って食べます。

その後はまた自由時間ですが、この時間から子どもたちは風呂に入ります。男女はもとより、同性どうしでもいたずらをするような事が起きて以来(性器をなめさせる、など)、お風呂は全ての子どもが一人で入るようになりました。

それぞれの子どもには風呂とともに、自由時間にしなければいけない掃除も割り当てられています。部屋に掃除機がけ、机拭きといったことを15分程度で行います。

自由時間に使われる紙の枚数も厳格に管理されています。というのも、紙を使って子どもたちが自分の個人情報(自宅の電話番号やメールアドレス、通っている学校など)を他の子どもに明かす可能性があるからです。紙には通し番号が振られており、子どもが遊び終わったら紙を返却します。それを職員が数えて全てそろっているかを確認します。

個人情報を明かすのが厳しく禁止されているのは、「その子どもの素性が知れてしまい、さらに出所後にトラブルに巻き込まれるのを防ぐため」だそうですが、いまいちピンときません。それが正しいのであれば、社会的養護(施設や里親家庭)に入った後にも徹底的な箝口令をしかないと整合性がとれないようにも思えます。

18時からは夕食で、例のごとく30分で平らげた後には歯磨きをして、18時半からは一日の振り返りの時間になります。皆が日記を書き、今日の出来事、よくできたこと、できなかったこと、明日やることを書きます。