【ルポ】子どもたちが「神かくし」状態になっている一時保護の実態

本当に必要な「子ども支援」とは何か
慎 泰俊 プロフィール

X一時保護所の一日

X一時保護所は、関東のある児童相談所に併設されています。2階建てのほぼ正方形の建物で、30歩で隅から隅まで歩くことができます。

朝7時。職員たちが電気を一斉につけて、子どもたちの部屋に入ります。

「朝だよ―、起きなさい」

寝坊は許されません。7時5分にもなると全ての子どもが布団をたたんで寝室から出てきました。私が寝泊まりをさせていただいたいくつかの児童養護施設とは大違いの、ものすごいスピードです。一時保護所での生活は、この異常に細分化された規律とそれをきちんと守る子どもたちによって特徴付けられていました。

多くの一時保護所では窓が5cm程度までしか開きません。なぜそうしているのかと多くの一時保護所で質問をしましたが、答えは常に同じです。

「子どもたちが脱走しないためです」

 

また、多くの一時保護所では、警備会社によって設置されたセンサーがあちこちに張り巡らされていて、そのセンサーに手を延ばすと事務所でアラームが鳴り、警備員が駆けつけるようになっています。

また、ここでは子どもたちは裸足でも靴でもなく靴下をはいて過ごさないといけませんが、職員はなぜか全員スニーカーを履いています。なぜかと聞いたら、ある職員からは「ああ、あれは子どもが逃げ出しにくいようにしつつ、仮に逃げ出したときも捕まえやすいからですよ」という答えが返ってきました。

確かに廊下を靴下で走ろうとすると滑りますし、屋外を裸足で歩いていたら周りの人々は奇異に感じて呼び止めるでしょう。唯一の例外は体育館やグラウンドで運動をするときで、このときは靴をはくことが許されます。

朝起きたあとの1時間は自由時間で、学習室やプレイルームで漫画を読んだり、おもちゃをつかって遊んだりして過ごします。手が空いている時には職員も混じって一緒に遊びます。

ある保育士の職員は、幼児たちのために紙芝居を読んでいました。テレビを見ている子どももいますが、テレビは自分たちでつけることが許されません。必ず職員に「テレビをつけてください」とお願いをしないといけません。

この、子どもたちが事あるごとに「お伺い」をするのもここでの生活の特徴です。小学校低学年の子どもたちが年上の子どもたちの部屋に行こうとするときには、職員に「入ります」と言わないといけません。

トイレに行く時には「トイレに行ってきていいですか」と職員に言わないといけません。性の問題を防止するため、トイレには一人ずつしか行けないため、場合によっては職員が「他の子が入っているので待つように」と静止します。

なぜ食べるのが速すぎるのか

起床後1時間の自由時間を経て、8時から朝ごはんになります。

男子が当番である場合には、食事時間の15分前に食堂に入り、準備を終えたら、一人を除いて皆が席に座り、その一人は「食事の準備ができましたよー」と女子のグループがいる部屋に向かって声をかけます。そうすると、女子の集団は一列にならんで食堂に入ってきます。

ここでは、男子と女子は口もききません。もともとは一緒に生活をしていたものの、様々な性関連のトラブルが発生した結果、生活を分離するように決まったようです。男子は一階、女子は二階で過ごし、体育館に向かうドアも分けるという徹底ぶりになっています。

とはいえ、この保護所の建物はもともと男女がともに生活することを想定して作られており、食堂だけはどうにも分離するわけにはいかなかったため、男女がともに食事をします。

食堂に全員が揃うと、当番の子どもが挨拶をします。

当番:「いただきますをしていいですか」
全員:「はい」
当番:「いただきます」
全員:「いただきます」

こうして食事が始まります。まず驚かされたのは、子どもたちの食事速度です。私は普段食べるのが速すぎて、いつも食事相手のペースに合わせるのに苦労するのですが、その私とほぼ同じペースで料理を平らげていきます。半分くらいの子どもが15分で食事を終わらせています。

15分が経つと、職員が立ち上がり、言います。

「おかわりをしたい人はいますか」

約半数の子どもが手を挙げます。そして、職員は順番に子どもたちを炊事場近くに呼び、おかわりを与えます。一度に席を立ってよいのは一人だけです。

そして、25分後には全員が食事を終えます。

自分の子ども時代を思い出しながら子どもたちを観察していると、食事が早い理由が分かりました。私語やふざけが圧倒的に少ないのです。