100年生きるのは幸せなのか?長寿はめでたいが家族はこんなに大変

「口に出せない」ニッポンの悩み
週刊現代 プロフィール

だが、実際に80歳が100歳を介護することなど可能なのだろうか?

現在、茨城県に住む老母(98歳)を東京から遠距離介護している山西悟さん(仮名、78歳)が語る。

「いままでは、車で週に1回は母の家を訪ねていたのですが、さすがに頻繁に通うのがつらくなってきました。ヘルパーさんや近所の人が見ていてくれるので、少しずつ訪問するのが間遠になっています。

しかし、離れているとそれはそれで心配なことも出てくる。とくにおカネの問題です。

あるとき、母の家に蟹やら牛肉、大量の野菜などが頻繁に届くようになった。母に聞いても要領を得ないので、捨ててあった箱を調べたところ、北海道の業者から代引きで送られてきたことがわかった。そのたびに3万円も4万円も支払っていたようです。

業者は、母が独居していることにつけ込んで、電話で注文を取って、勝手に送りつけていたのです。

他にも、掃除機の空き箱の中に隠してあったへそくりがごっそりなくなっていることがあった。200万円もあったでしょうか。いまだに行方がわかりません」

山西さんのように自身も後期高齢者である場合、自分の生活で精一杯になり、親のことまで目が届かなくなるのはいたしかたないことだ。やはり、高齢者が高齢者を支えるのは経済的にも体力的にも限界があるだろう。

では、実際のところ、100歳の高齢者は、どのような健康状態にあるのだろうか。
最近では100歳を超えても絵を描いたり、歌を歌ったりする元気な高齢者がメディアに取り上げられ、羨望と尊敬の念を集めることが多いが、「そのような高齢者は例外である」と川崎幸クリニック院長の杉山孝博氏は語る。

「なかには90歳を過ぎても、100歳になっても芸術や政治活動を続ける人がいて、私もそれはすごいことだと思います。しかし、そのような突出した人たちは、あくまで例外なのです。

加齢とともに、視力や聴力、知的機能が落ちてくることは避けられません。例えば、認知症。厚労省の研究班が出したデータによると、95歳以上の高齢者の79.5%は認知症です」

 

運動機能はどうだろう? 100歳前後の超高齢者のうち何割が、自分の足で歩けるかというデータは存在しないが、ある程度推定することはできる。

厚生労働省の「国民生活基礎調査('13年度)」によると、「日常生活に影響のある者の率(男性)」は70~74歳で約20%、75~79歳で26%、80~84歳で35%、85歳以上で44%と増加している。仮にこのペースで増加していけば、100歳の段階では約8割の人が外出や日常生活に支障のある健康状態だろうと推定される。

また、嚥下する力が弱くなって、自分の力で食べることができない超高齢者も多い。要町ホームケアクリニック院長の吉澤明孝氏が語る。

「特別養護老人ホームへ行くと、認知症や脳梗塞の後遺症が進んで動くこともできず、胃ろうで栄養を取りながら日常を送られている方も少なくありません。ただ、このような形で100歳を超えて生きることは、果たして医療の正しい形なのかという疑問があります。

介助を必要としたとしても、自分の口で食べることが人間の原点です。現在、100歳を超えても元気に歩いたり、食事をしたりする人が増えていますが、みなさん、エアロバイクを使って足の筋肉を鍛えたり、食事をしてむせることがあっても、根気よく嚥下リハビリをして自力で食事をしようと試みています」