100年生きるのは幸せなのか?長寿はめでたいが家族はこんなに大変

「口に出せない」ニッポンの悩み
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病院窓口で追い返される

言うまでもなく、長寿それ自体はめでたいものだ。しかし、このような極端な高齢化は、いまだかつて人類が経験したことのない社会の到来を意味する。

「'17年は、高齢化が新しいフェーズに入る象徴的な年になるでしょう。

65歳から74歳の前期高齢者と75歳以上の後期高齢者の人口を比べると、'16年まではまだ前者のほうが多いのですが、'17年にその数が逆転すると予想されているのです。

常識的に考えれば、人は歳を取るにつれて寿命を迎える確率も高まる。ですから高齢者の人口自体は増えても、100歳以上の人々に代表される後期高齢者の数は減っていくのがこれまでの常識でした。そのような常識的な人口ピラミッドが崩れ始めるのが'17年という年なのです」(前出の河合氏)

'15年10月1日時点の65歳から74歳までの人口は1752万人、75歳以上は1641万人。この人口構成が今年、逆転するというわけだ。政策研究大学院大学名誉教授の松谷明彦氏が語る。

 

「100歳以上の人は言うまでもなく、75歳以上の高齢者は医療や介護を必要とし、その費用もかさんできます。後期高齢者層が猛烈な勢いで増えることで、現在の医療福祉制度は崩壊せざるをえないでしょう。

75歳以上の人口は、これからたった10年で530万人も増えると予測されています。これほどのスピードで高齢化が進めば、まず病院が足りなくなる。急いで病院や介護施設を建てようとしたところで、地元調整などもあって、そう簡単には行きません。

つまり今の医療・介護体制ではどうにも対応できない病人や要介護者が大量に発生するというわけです」

病院に行っても、長蛇の列で相手にしてもらえない。介護施設に入る順番待ちをしているうちにどんどん具合が悪くなっていく―そんな医療・介護難民が日本中に溢れることになるだろう。松谷氏が続ける。

「現在、日本全体の病床数は約90万床しかありません。しかも、ほとんど満床状態です。ここに今後、530万人の後期高齢者が増えたらどうなるか? 後期高齢者の8~10%は入院が必要になるという推計があります。530万人の10%は約50万人。

いよいよ社会として病人を選別しなければならない時代が到来するのです。『具合が悪いのかもしれないけれど、自力で治してください』『もう治る見込みはないので、病院に来ないでください』と、病人を追い返さなければ日本社会が持たない時代になる」

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「元気な100歳」は例外

高齢者のなかには、「自分たちは若い頃に一生懸命働いて高齢者を支えてきたのだから、これからも若者たちがしっかり働いてくれれば大丈夫」と信じている人もいる。だが、それは甘い。

 

現在、100歳の高齢者1人に対して、どれくらいの医療費や介護費が支払われているのか。厚労省の「医療給付実態調査報告('13年)」によると、100歳以上の高齢者に対して年間支払われる医療費は117.8万円。

さらに介護保険の受給者1人あたりの介護サービス費は1年で191.3万円(厚労省「介護給付費実態調査の概況('14年)」)であるから、合計して300万を超える金額が、百寿者のために支払われていることになる。超高齢者が加速度的に増えれば、国庫にかかる負担もこれまでとは比較にならないほど大きなものになる。

「現在、日本の高齢化率(総人口に占める65歳以上人口の割合)は26.6%です。つまり4人に1人が高齢者ということ。これが'50年代初頭には2.5人に1人が高齢者になると推計されています。しかも後期高齢者のウェイトが大きくなる。

これからは60代の人たちが『若者』として扱われる時代がやってきます。60歳が社会の中心に立ってバリバリ働き、70歳を超えた人が100歳以上の人の面倒をみる、そんなことが当たり前の世の中になる」(前出の河合氏)