楽天市場の「絶望的な使いにくさ」に隠された意図〜深読みウェブ散歩

効率だけがすべてじゃない!?
山本 貴光 プロフィール

遠すぎる「買い物かご」

ページが切り替わる。

ん? 購入ボタンは? 「楽天市場」より

ん???

たぶん販売ショップの商品ページに来たはず……だが、お目当てのiPhone7の姿はどこにも見えない。

代わりにこれまた検索フォームや広告など、いろいろな表示が並んでいる。ここはどこ? と一瞬、どこにいるのかわからなくなる。クリックする場所を間違えたか。

めげずに画面を下へ下へと見てゆく。途中の関係なさそうな表示はとりあえず全部無視。購入ボタンはどこか。

【手の動き】ひたすら画面を下へスクロール。

9画面分スクロールしたところで、ようやく「買い物かごに入れる」が現れた!

あった!買い物かご! 「楽天市場」より

ここまでの8画面分はなんだったのか……と思って振り返ると、どうも途中からは一応商品の説明だったようだ。あまりにもいろいろな要素が外からはうかがい知れない順で並ぶものだから、どこからが商品情報か区別がつかなかった。

念のためこのページはどこまで続くのかと思って見てみたら、全部で16画面分にわたっている。なんだかスゴイ。

すぐに商品を購入させるだけなら1画面で収まるところ、その前にいろいろなものを目に入れようというわけだ。ちょっと意地悪く言えば、利用者の操作の手間が増えて多少不便になってもいいので、目的物に辿り着く前にいろいろ目に入れちゃおうという狙い。

誰かと待ち合わせで繁華街の奥にあるレストランに辿り着くまで、道々居酒屋の客引きから声をかけられ続けるような気分でもある。

と思って画面にもう一度目を戻すと、右下に小さく「買い物かごへ」ボタンがある。これを押すと、ページのどこにいても「買い物かごに入れる」ボタンまで移動する仕掛け。

最初から「買い物かご」を一番上の画面に出しなさいよと思わなくもないけれど、そこはそれ、いろいろな思惑があるのだろう。サービスがいいんだか悪いんだか!

【手の動き】カーソルを「買い物かごに入れる」まで動かしてクリック。

「買い物かごに入れる」を押すと、さすがに次に現れたページでは、あまり余計な要素は表示されず、ほぼ1画面に収まっている。

ここは意外とシンプル 「楽天市場」より

ようやく騒々しい通りを抜けて静かな店内へやってきたような気分で落ち着くとともに、旅先の旅館について「やれやれ、疲れたわい」と一休みしたくなるような気持ちになる。なんというか、「情報疲れ」とでも言おうか。

慣れれば使いやすい?

――とまあ、この調子で眺めてゆけば、まだまだたくさんの見所があるのだけれど、今回はここまでにしよう。

見てきたように、このサイトでは、目的の商品に辿り着くまでにかかる手間はけっして小さくない。むしろ効率とはほど遠く、ユーザーの目と手がページのあちこちをさまようようにつくられている。

仮にサイトの設計者がそうしようと思ったら、検索の手間や商品購入までに必要な操作の手数はぐっと減らせるはず(私が思いつくぐらいだしね)。

例えば、画面に表示する情報を必要最小限にとどめ、検索の精度を高めて結果からノイズを減らし、購入までのステップを最小化するなんてことも、ちょっと気の利いたデザイナーとエンジニアがいれば朝飯前だろう。

とはいえ、実際には意図して現状のように設計していると思われる。そうね、ちょうど多種多様なショップがならぶ商店街を歩き、店に入ればあれこれの商品やポップが目に入り、商品をレジにもっていくと店員さんが「それならこれもどうですか」なんておすすめしてくる、そんな場所のように。

 

それだけに楽天初心者は、このサイトのどこかにあるはずの商品を求めてさまようことになる。

たとえるなら、それは宝探しのようなもの。ちょっとオオゲサに言えば、出口を探し求めて画面のあちこちをクリックする「脱出ゲーム」に近いかもしれない。その過程を楽しめるかどうかでサイトの評価は大きく分かれそう。

他方で人はたいていのことには慣れてしまう動物でもある。サイトがいくらごちゃごちゃして多少不便でも、何度も通い詰めている筋金入りのリピーターなら、それでもテキパキと効率よく必要な情報をみつけて買い物をすませるに違いない。何百何千の食材が並ぶスーパーの棚から、必要なものをひょいひょい拾い上げてゆく人のように。

そういうユーザーにとっては、下手にサイトデザインを改良されてしまうより、いまのままのほうが使いやすいということもあるだろう。これは設計者からすると悩ましいことでもある。改善したつもりが「使いづらくなった」と言われかねない。

それにしても、これだけ膨大な商品がネットで買えるようになると、目的のものを探し当てるのもなかなかに手間のかかることになってきた。贅沢といえば贅沢なことだが、選択肢が増えるほど、そこからどうやって選ぶかが課題となるわけでもある。

そのうち検索が得意でなかったりメンドウに感じる人のために、ネットショッピングを手伝うサービスとかAIが現れたりして、なんて空想も膨らむ。

いずれにしても、溢れかえるモノやデータの山とどうつきあうか、それをスマホやパソコンの限られた画面でどう操作するかということは、今後ますます大きな課題となるに違いない。

楽天のようなサイトで多くのユーザーがちょっと不便な環境の下、検索力を鍛えられるのも、あながち悪いことではないかもしれない。そんなことを考えたウェブ散歩でありました。