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為末大が語る、障がい者と健常者の垣根を溶かす簡単な方法

スポーツが持っている可能性

メインスタンド前では、右代選手による走り幅跳び指導。より遠くに跳ぶための足の動かし方を教えてくれた。最後にデモンストレーションとして右代選手が跳ぶと、196cm92kgの巨体が楽々6m前後の大ジャンプ。子どもたちから驚きの声が上がる。

右代選手はみんなの前で大ジャンプ!トップ選手が魅せるパフォーマンスに、子どもたちは目を輝かせた

走り高跳びの指導は鈴木選手。子どもたちに、記録を出すことよりも跳ぶ楽しさを伝えようとしていることが見ていてもわかり、実際に子どもたちも思い思いの跳び方で笑顔いっぱいで跳んでいたのが印象的だった。

そして、かけっこコーナーでは、伊藤さんと高瀬選手からより速く走るコツを親子に伝授。来年の運動会までにマスターすれば一躍ヒーローになれること間違いなしということもあって、子どもたちの目の色が違う。

伊藤さんと高瀬選手の適確な指導に、子どもはもちろん、大人も真剣!

午後には、抽選で選ばれた子どもたちが6つのチームに分かれ、参加アスリートがそれぞれのチームのリーダーとなって、チーム対抗リレーが開催。速い、遅いはともかく、一生懸命走る子どもたちの姿に会場はこの日一番の盛り上がりを見せた。その後閉会式が行われ、この日のイベントは無事終了――。

「今日は子どもたちといっしょにウィルチェアーラグビーを体験して、子どもたちからすごく元気をもらいました。障がい者も健常者も『一つになる』ということとともに、そこに向かっていく環境を提供してくれるDREAM AS ONE.の活動を誇りに思います。今日はとても楽しかったです」(池崎選手)

リレーでは佐藤選手率いる黄色チームが優勝!

ヒーローの誕生

最後に、障がい者スポーツの裾野を広げていくために一番重要なことは何か為末さんに聞いたところ、「選手が『ヒーロー』になること」だという答えが返ってきた。

「子どもにとってのヒーローというのは、サッカーのロナウドや陸上のボルトだったりしますよね。障がい者アスリートにも彼らのようなヒーローが必要だと思っています。

特に障がい者スポーツ選手の活躍は、苦しい状況にあるいろんな人を励ましていると思います。それは、障がい者アスリートは障がいを負っている人の範囲を超えて、健常者も勇気づける存在になり得るということ。だからこそ、障がいのあるなしは関係なく、『アイツを見に行きたい!』と思えるようなヒーローが生まれてほしいなと思っています。

ただ、ヒーローになるといっても、本人の努力だけではなかなか難しく、周りの環境とかインフラも支えていかないといけません。そういう意味ではこうしたイベントも大事だと思いますし、日常的に支えていくシステムも必要だと思うので、DREAM AS ONE.の活動には期待したいですね」

「一流アスリートに会ったからといって、スポーツを実際にやらなくてもいい。ただ、何か一つに頑張ってきた人が持っている独特の空気みたいなものに触れて、子どもたちが自分の将来を考えるきっかけになったらいいですね」(為末さん)

この日、お父さんと参加したゆなさん(10歳)は、「今までやったことがない種目をやってみて、難しかったです。走り高跳びも、見ている分には簡単そうだったけど、義足の鈴木選手が2mも跳ぶなんて信じられなかったです。特に印象に残っているのは義足体験。義足を付けて走るなんてすごいと思いました」と、感想を語ってくれた。

お父さんと参加した10歳のゆなさん。この数時間で、“スポーツ”を通じて感じたことを元気に話してくれた

閉会式後、世界最高峰の場で戦っている右代選手、高瀬選手だけではなく、義足の鈴木選手、佐藤選手、そして車いすの池崎選手、今井選手に子どもたちが群がってサインをねだられる姿は、まさに「ヒーロー」そのもの。そこには障がい者と健常者という垣根は消えていた。

障がい者と健常者の垣根を超えて、ともに一つになる――。子どもたちの満足げな笑顔を見て、為末さんとDREAM AS ONE.の思いが通じたことが確信できた。

<コラム>ウィルチェアーラグビー日本代表の池崎選手、今井選手が三菱商事に入社
ウィルチェアーラグビーの日本代表で活躍している今井友明選手が2016年4月に、同じく日本代表の池崎大輔選手が7月に三菱商事に入社した。2020年の東京でも活躍を誓う二人は、今後、競技活動に専念するとともにDREAM AS ONE.の活動や講演活動、障がい者スポーツに関するイベントにも参加する予定だ。
2016年度、三菱商事は(一社)日本ウィルチェアーラグビー連盟のオフィシャルスポンサーとなったことから、今後も両選手やウィルチェアーラグビーへのサポートを通じて、障がい者スポーツに対する理解度と認知度を高めていくという。

取材・文:中野克哉(フリーランスライター)

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