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街の自転車屋さんが上場企業に急成長を遂げたワケ

「1.5代目」社長の奮闘
サイクルベースあさひの下田佳史社長

全国440店の自転車販売店「サイクルベースあさひ」を展開するあさひを取材した。社長の下田佳史氏(45歳)は、創業者の父と共に、街の自転車屋を売り上げ480億円の東証一部上場企業に育てた人物。彼が事業に成功した秘訣を探った。

「修理は面倒」の間違い

【20年】

企業には「お客様は望むもののなかなか実現できない」ことがあると思います。実は、これを成し遂げることが大きな成長をもたらします。たとえば、修理に必要な時間は短いほうがいいに決まっています。

そこで当社は、スタッフの修理技術を磨き、パンクなら10分以内の修理を可能にしました。また'17年2月からは、20年ぶりに自転車の出張修理サービスを復活させます。

創業当初は実施していたものの、お店に専門スタッフがいなくなる時間が増え、やむなく中止していたのです。しかし我々はドミナント出店(ある地域に集中的に店を増やすこと)の結果、修理のスタッフが足りないときは別の店のスタッフが伺える体制を構築できました。

父と2代、20年間にわたり「お客様にとっては出張修理のほうが便利に決まっているのだが」と胸を痛めてきた結果です。

 

【修理】

様々な事業を展開するか否か、判断基準はシンプルです。常に「正しいかどうか」を考えるのです。たとえばバブル期以降、自転車が使い捨てされるようになりました。「修理は面倒、買ったほうがラク」という風潮がありました。これがよいわけがありません。そこで当社は修理スタッフを充実させ、結果的にお客様の支持を得ました。

また'90年代に国内のメーカーが続々廃業して品数が減り、お客様が自分に合った自転車を選びにくくなりました。そこで当社は、より多くのお客様の声に応えるべく、プライベートブランドを立ち上げました。信念を持って正しいことを長く続ければ必ずうまくいく。間違っても大けがはしないでしょう。人生も同じだと思います。

【日常】

実は私自身も「自転車少年」でした。父の店が自転車のレーシングチームを運営していたため、自然と感化されたのです。

中学校1年生の秋に琵琶湖一周・170kmを走破し、今も自転車通勤をしています。電車を使うと1時間20分かかりますが、自転車のほうが早くて50分ほどで着きます。体力もつくし、ダイエットにもなるし、時間の節約にもなるからいいことずくめです。

中学校1年生のときに琵琶湖一周170kmを走破。今も「休日は自転車でおいしいものを食べに行くのが好き」とか

無理に「体を動かさなきゃ」「やせなきゃ」と思うより、日常生活の中で自転車を使っていただくほうが、長く楽しく健康作りができると思いますよ。

一家人

【1・5代目】

実を言うと、父の事業を継ぐつもりはありませんでした。大学時代に当社の1号店でアルバイトをしましたが、これは「身近なバイト先」だったから。しかし接客するうちに商売の魅力にとりつかれました。人が喜ぶことをやると、まわりまわって返ってくる! と気付いたのです。

その後、大学4年生になっても就職活動をせずにいると、父が心配し「将来のこと、ちゃんと考えてるのか」と言われました。私が「一社だけ行きたい会社がある」と話すと、父は察したようで「甘くはしないよ。従業員から『家族に甘い』と思われるようではいけない。だから君には人の3倍働いてほしい」と言われました。

その後は実際にそれくらいの勢いで働き、ここまでの多店舗展開を実現しました。だから私は自己紹介するとき、2代目でなく「1・5代目」と名乗っています(笑)。