ファミレス「24時間営業」撤退、はたして「生産性」は上がるのか?

長時間労働に関する壮大な勘違い
加谷 珪一 プロフィール

解決すべきは「生産性」の問題

こうした結果になるのはドイツ経済やフランス経済の生産性が極めて高く、基本的に社会が豊かだからである。

厚生労働省が昨年9月に公表した労働経済白書によると、日本の実質労働生産性(マンアワーベース)は38.2ドルだったが、これに対して、フランスは60.8ドル、ドイツは60.2ドルという結果だった。

ドイツやフランスの生産性は日本と比較すると約1.6倍もある。これだけの稼ぎがあれば、小売店も無理に深夜営業や休日営業を実施しなくても十分に利益を上げられるだろう。

要するに日本経済は貧しく稼ぎが少ないという話なのだが、自動車やスマホといった製品価格はグローバルに形成されるので、成長できない国の相対的な負担は大きくなる。

労働時間が短ければいい? Photo by iStock

日本における長時間労働の背景については様々な見解があるが、純粋に数字から判断すれば、長時間労働をしなければ今の生活水準が維持できないというのが主な理由ということになる。

厚生労働省では日本の生産性の低さについて、時間要因ではなく付加価値要因が大きいと結論付けている。つまり日本企業はグローバルな競争環境に適用できておらず、儲からないことばかりやっており、結果として長時間労働にならざるを得ない。

 

日本はすでに成熟国家のフェーズに入っているが、いまだに途上国型経済から脱却できておらず、中国や韓国といった新興工業国をライバル視している。本来であれば、成熟国型の豊かな消費経済に移行しているはずであり、それが実現できていれば、そもそも無理に営業時間を延長しなくても同じ経済水準を維持できていたはずだ。

営業時間の短縮や長時間残業の是正という問題は、経済そのものの仕組みと深く関係している。この部分を抜きに労働時間の話だけに問題を矮小化してしまうと、本質的な解決はかえって難しくなるだろう。

働きたい人は働き、ゆっくり休みたい人は休むといったように、自由で多様性のある社会を構築することが重要であり、それが実現すれば、消費経済における付加価値は自然と高まってくる。見直すべきは労働時間ではなく、途上国的な日本人のライフスタイルそのものである。