私たちの祖先はどこから来たのか? 「3万年前の大航海」への挑戦

「最初の日本人」は航海者だった
海部 陽介 プロフィール

2016年、第一段階の実験航海

最初の実験に私たちが選んだのは、「草の舟を漕ぐ」というモデルでした。与那国島を出発し、目指すのは直線で75km離れた西表島です。

太古の舟は遺跡に残っておらず、直接知ることはできません。それでも当時の道具技術や、地元で入手可能な材料といった制約をかければ、可能性を絞れます。竹や木といった候補もありますが、まず最初に、成形が容易な草の舟を試すことにしたのです。

与那国島に自生しているヒメガマという草を刈り、古来から島で使われているツル植物で縛って、長さ6.4mほどの舟を作りました。ヒメガマ舟は、速度こそ人が歩く程度でしたが、浮力と安定性が優れていることがわかりました。

そして時計やGPSを持たず、風やうねりや星など、自然のサインから針路を読みとって舟を進める、テスト航海に挑んだのです。漕ぎ手となったのは、地元を中心とする男女の若者たち。移住をシミュレーションするため草舟は2艘にし、計14人が乗り込みました。

当日は曇天で目標の西表島が見えませんでしたが、そんな悪条件の中でも、漕ぎ手たちは方角や時刻を正しく捉えていました。それでも舟は海流に流されてしまい、私たちは実験の中断を余儀なくされました。

事後に解析した航跡データや海上保安庁の報告から、この日は北向きの海流が、普段の倍以上に強まっていたことがわかりました。

こうして私たちの最初の挑戦は、海の厳しさを思い知らされる結果となったのです。それでも祖先たちは、そうした困難を乗り越えて島にたどり着いています。私たちも諦めることなく、試行を繰り返して、なんとか島へ到達する術を探して行こうと考えています。

 

次の舞台は台湾

私たちの最終目標は、台湾から与那国島を目指す大航海で、2019年頃の実施を目指して準備を始めています。それは巨大な黒潮を越え、遠く水平線の下に隠れた目的地を目指す、3日間ほどに及ぶタフな航海になるでしょう。

祖先たちは、そこでどんな舟を使ったのでしょう? 様々な可能性を検討していきますが、今年からスタートする台湾東海岸での活動では、地元のアミ族の方々の協力を得て、竹の舟を試作する予定です。

彼らは台湾のどこから出発したのでしょう? 台湾の高山から琉球の島の視認性を確認し、舟のスピードと海流の強さを考えて作戦を練っていきます。

研究もさらに充実させます。帆の可能性追究のほか、琉球だけでなく、日本周辺の主要な海峡における祖先たちの活動を総覧することを計画中です。そうして、かつてこの地域に存在したはずの、太古の海洋文化の全貌を解き明かして行きたいと考えています。

「日本人誕生」の謎に迫る!

私たちの祖先は、なぜ、どのように日本を目指したのか──。

3万年前の航海を徹底的に再現! 人類の「本当の姿」を探る一冊。

海部陽介『サピエンス日本上陸』好評発売中!

航海プロジェクトについてもっと知るには(2017年現在の情報です)
公式ウェブサイト・フェイスブック
http://www.kahaku.go.jp/research/activities/special/koukai/
https://www.facebook.com/koukaiproject/

テレビ番組(2016年に放映された番組がネットで視聴できます)
GYAO!(1/27正午まで) http://gyao.yahoo.co.jp/p/11140/v00040/
ニコニコ動画(1/27正午まで) http://www.nicovideo.jp/watch/1482805619
TVer(1/27正午まで) http://tver.jp/episode/24440798/

古代のホモ・サピエンスについて知るには
「世界遺産ラスコー展 クロマニョン人が残した洞窟壁画」
アフリカを出てユーラシアの西へ移動したホモ・サピエンス集団(=クロマニョン人)が発展させた、素晴らしい芸術文化を紹介する日本初の展覧会です。国立科学博物館にて2017年2月19日まで。
http://lascaux2016.jp/