私たちの祖先はどこから来たのか? 「3万年前の大航海」への挑戦

「最初の日本人」は航海者だった
海部 陽介 プロフィール

人間の挑戦の歴史を究明する

前置きが長くなりますが、ここで、グローバルな視点からプロジェクトの意義を整理しておきましょう。

私たちホモ・サピエンスは、20万~10万年前にアフリカで進化し、5万年前以降に世界中へ大拡散を遂げたことがわかっています。

現在、ホモ・サピエンスが世界中に暮らしていることを、私たちは当たり前と思いがちですが、人類は最初から世界中にいたわけではありません。地球全体へ広がることができたのは、祖先たちが寒冷地を克服する装備や、舟の発明といった技術革新を成し遂げたからで、それが可能な創造力を進化させた人類だったから、と言えるでしょう。

日本への渡来も、そうした世界拡散の一幕だったわけですが、そこで困難な海を越えるというドラマがありました。渡海としては、4万7000年ほど前に、インドネシアの海を越えてオーストラリア大陸へ渡った例があるのですが、先に述べたように琉球の島への到達は困難です。

祖先たちがどうやってそれを突破したかを究明できれば、人類の海への挑戦史の、大きな空白を埋めることができるはずです。

 

クラウドファンディングで資金を獲得

さて、強力なプロジェクト・チームはすぐにできましたが、課題は資金でした。

研究者だけで小さくやるなら、少額で済むでしょう。しかしこのプロジェクトを研究者だけの体験で終わらせるのは「もったいない」と私は考えました。多くの一般の方々と、この壮大な謎解き体験を共有したい。しかし規模を大きくすれば、それだけ費用もかかります。

困っていたところ、上司の林良博・国立科学博物館館長から薦められたのが、日本の国立の博物館としては初挑戦となる、クラウドファンディングだったのです。

初めての試みは試練の連続でしたが、博物館が一丸となって臨んだ結果、875名の方々から総額2638万円が寄せられ、思い描いていた最初の実験航海を実現できることになりました。

クラウドファンディングは、プロジェクトを広く共有したいという私たちの理念と親和性が高く、たいへん有効な方法だと感じています。支援者の方々には、博物館が提供する多彩な特典以外に、定期的に進捗状況をお伝えし、研究チームとの交流の場も設けています。