ボクシングファンを興奮させるファイトが少なかった2016年が終わり、今年は一転して興味深い1年になりそうな予兆が見えている。
3月4日にキース・サーマン(アメリカ)対ダニー・ガルシア(アメリカ)、3月18日にゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)対ダニエル・ジェイコブス(アメリカ)、4月29日にはアンソニー・ジョシュア(イギリス)対ウラディミール・クリチコ(ウクライナ)といった楽しみなカードがすでに決定した。
多くのスター選手がキャリアの重要な時期にさしかかり、一方でアル・ヘイモンの“プレミア・ボクシング・チャンピオンズ(PBC)”は視聴率という明白な形で結果を出さなければいけない年。そんな状況だけに、今年は好カードが次々と実現することもあり得るだろう。
そこで今回は、今年中に特にどうしても実現させて欲しい5つのドリームファイトをピックアップしてみたい。これらのバトルがすべて挙行されれば、2017年は間違いなくエキサイティングな1年になるはずである。
【ミドル級】
ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン/36戦全勝(33KO))vs.サウル・“カネロ”・アルバレス(メキシコ/48勝(34KO)1敗1分)
現在のボクシング界で最大のカードがこの一戦であることは間違いない。23連続KOを続ける怪物王者ゴロフキンと、母国メキシコを中心に絶大な人気を誇るカネロ。稀有なスター性も備えた2人の激突は、ボクシングの範疇を超えた話題を集めることだろう。
2015年5月のフロイド・メイウェザー(アメリカ)対マニー・パッキャオ(フィリピン)戦以降、ボクシングのペイパービュー(PPV)の売上数は総じて低迷してきた。プレミアケーブル局の予算削減に端を発したPPV興行の乱発、違法ストリーミングの浸透などがその原因。そんな中でも、ゴロフキン対カネロ戦だけは100~150万件の売り上げが保障されていると言っていい。
それらの背景から考えても、2017年中にこの試合が行われるかどうかにはボクシング界にとって極めて重要な意味がある。
昨春以降、カネロとゴールデンボーイ・プロモーションズ(GBP)が露骨な時間稼ぎを続けていることにアメリカ国内でも批判は多い。ただ、先に延ばすほどカネロの勝機は膨らみ、ビジネス的にも旨みが出るのは紛れもない事実。そして、公言してきた通り、GBPは今夏についに引き金を引くのではないか。
ゴロフキンが3月にジェイコブスを下し、カネロが5月の一戦(相手はメキシコのフリオ・セサール・チャベス(メキシコ)か、イギリスのビリー・ジョー・サンダース?)をクリアすれば、もう対戦回避の口実は残されていない。
2017年9月17日、場所はラスベガスかテキサスのAT&Tスタジアム――。全世界のスポーツファンの視線がここで再びボクシング界に注がれることになる。
【ヘビー級】
アンソニー・ジョシュア(イギリス/18戦全勝(18KO))vs.デオンテイ・ワイルダー(アメリカ/37戦全勝(36KO))
五輪での金メダル、プロでも全勝全KOのまま世界タイトル奪取と、ジョシュアは順調にスター街道を歩んできた。4月29日のクリチコ戦に勝てば、ヘビー級待望の新たな支配者候補として注目を浴びるはずだ。
サイズ、技術、パワー、スピード、喋りの上手さを備えたイギリスの万能派は、実際にワールドワイドなスーパースターになる要素も十分に備えているように思える。
もっとも、大ベテランのクリチコはそう簡単に勝てる相手ではない。これまで8ラウンド以上を戦ったことがないジョシュアは、40歳を超えている老雄の壁を無事に突破できるか。この難関を乗り越えれば、ジョシュアとワイルダーの統一戦というメガファイトが見えてくる。
ワイルダーもこれまで破格のパワーを誇示しており、無敗のパンチャー同士の米英決戦はインパクト十分。開催地がどちらであろうと、アメリカでも爆発的な話題を呼ぶことは確実だ。最重量級に久々に脚光が当たり、その勝者はヘビー級新時代の覇者として認められるはずである。