三浦瑠麗さんが選んだ「現実社会につかれたら読みたい小説10冊」

時には小説世界に逃げ込んで
三浦 瑠麗 プロフィール

タイトルからして「逃亡」というテーマそのものの『逃げ道』は、サガンの中で一番好きな小説です。ブルジョワの生活が農村と交錯することで、人生の脇道に逸れ、虚飾は剥ぎとられ、次第に人間の動物的な本能がむき出しになっていく、上質な悲喜劇。軽くて読みやすくて面白いんです。

サガンがこの小説でやりたかったのは、自分の才能を示すことだったと思います。つまり人気作家ではあったものの作品は娯楽と軽んじられていたサガンが、成熟した後に、作家としての底力を見せつけたのだと。

破天荒な行動に注目が集まりがちですが、根は傷つきやすくギリギリのところで生きていた彼女の孤独感が全編に漂っていて、胸を突かれもします。

人間社会を冷徹に見つめるという意味では、小説も社会科学も同じかもしれない。毒をもって毒を制するという観点からは、小説やアルコール、コーヒーが必要です。時に小説世界に逃げ込んで、気分や風景を変えて、そしてまた、現実に戻ってくる日を送っています。

(構成/砂田明子)

「政治学も経済学も俯瞰してすべてを語れない複雑化した状況の中、トッドは〝トッド的物差し〟でもって、国家と歴史を語る。家族、人口、教育など、物差しが複数あるのもいい。柔軟な移民政策でも注目を集めている人です」

三浦瑠麗さんのベスト10冊

第1位『ナルニア国物語』全7巻
C.S.ルイス著、瀬田貞二訳 岩波書店 1700円(1巻)
ロンドンから田舎に疎開した兄弟姉妹が見つけたナルニア国。白い魔女が支配する国で、壮絶な戦いが幕を開ける

第2位『グリーン・ノウ物語』全6巻
ルーシー・M・ボストン著、亀井俊介訳 評論社 各1500円
「ナルニア同様、古い屋敷と、母の不在がモチーフになっていて、郷愁が掻き立てられる。孤独な人のための温かい本」

第3位『ダロウェイ夫人
バージニア・ウルフ著、土屋政雄訳光文社古典新訳文庫 724円
6月のロンドン。パーティーの花を買いに出かけた夫人は、昔の恋人と邂逅、現在と過去を行き来する「一日」が始まる

第4位『豊饒の海』全4巻
三島由紀夫著 新潮文庫 710円(1巻)
禁じられた恋を描く『春の雪』ほか、「究極の小説」を目指したと語る三島最期の作品

第5位『老妓抄
岡本かの子著 新潮文庫 460円
老いてなお生命力に溢れた、美青年を囲う老妓のあどけなさと妄執―。9編の短編集

第6位『不滅
ミラン・クンデラ著、菅野昭正訳 集英社文庫 1143円
「悩んでいる人にお勧め。クンデラ独特の軽みと愛と可笑しみが、心を軽くしてくれる」

第7位『愛人 ラマン
マルグリット・デュラス著、清水徹訳 河出文庫 750円
15歳の少女と中国人青年との性愛を描く。「なぜ少女というものが残酷かが理解できる本」

第8位『逃げ道
フランソワーズ・サガン著、河野万里子訳 新潮文庫 入手は古書のみ
戦時下のパリを出た上流階級4人組と農夫たち。異なる階級の衝突から生まれる悲喜劇

第9位『魔法の城』
イーディス・ネズビット著、八木田宜子訳冨山房 入手は古書のみ
「魔法を宿した指輪が過去とつながって、現在の窮屈さや困難から解放してくれる物語」

第10位『風の谷のナウシカ』全7巻
宮崎駿著 徳間書店 390円(1巻)
「アニメよりもナウシカが残酷で、すべてを備えた完全人間。好きな男性は多いと思う」

週刊現代』2017年1月14・21日号より