今年度の大学3大駅伝(出雲、全日本、箱根)のうち2冠を達成している青山学院大学。本日(1月2日)号砲が鳴る箱根駅伝では悲願の3連覇に挑むーー。
青山学院大学の強さのヒミツは、いったいどこにあるのか?
原晋監督の話題の新刊『力を引き出す 「ゆとり世代」の伸ばし方」』(博報堂の原田曜平氏との共著)で語られている「体育会らしからぬ教育法」を紹介しよう。
一見すると、上級生・下級生の垣根は低く、監督との距離も近い青山学院大学陸上部。実際に選手たちに聞いても、いわゆる体育会的な雰囲気はあまりないという。
しかし一方で選手たちが声を揃えて言うのが、寮則などのルールの細かさと厳しさ。とくに門限などは厳しいという。
原監督「組織というものは、ベースにはちゃんと組織としてのルールがあって、その上に自由な発想というのが乗ってくるものだと考えています。最初からすべての自由を与えてしまったら、それは単なる緩い組織となり、組織として重要な土台がしっかりできない。ですからまずはベースづくりには時間をかけました」
「集合時間にもうるさいですよ。というのは、われわれ陸上は、まずタイムで管理されている世界ですから、時間を大切にしないというのはあり得ません。
たとえば、一〇分〇〇秒が標準記録だったら、一〇分〇一秒だったらもう出場すら叶わない。それは数字で全部決められる競技の特性です。だからその時間管理というのは陸上競技の基本となる約束事と考えています」
「社会における決めごとというのは、じつはそんなに多くないはずなんです。挨拶をしましょうとか、時間を守りましょうとか、ごくごく当たり前の何項目にすぎないはずです。
この原則はいつの時代も変わらないはずです。それがいまはネットとかスマホとか、小道具が出てきているから大人たちが誤魔化されているけれど、原則は変わらないはずです。
だからベースの部分は誤魔化さずにきちんと守ろうよ、というだけなんですけどね。そこを変な大人が今回はしようがないから次からはちゃんとしようねなんて甘いことを言うから、世の中おかしい方向にいっているんだと思います」
携帯などの個人の連絡手段が普及して以降、社会人でも時間などの基本的な約束事は以前に比べ、ルーズな人が増えている。そんななかで基本的なルールを守ることが組織の基本だと言い切る監督は爽快ですらある。
じつは、簡単に部を強くするためだけなら、強権的に言うことを聞かせたほうが手っ取り早い。とくに駅伝のような競技では、極端な話、選手を「走るマシン」にしたほうが成果は出やすい。
しかし、原監督はその方法はとらなかった。
それは自身が駅伝選手だった高校時代の軍隊的な厳しい上下関係、その真逆の緩すぎた大学生時代、そして競技者をやめてからの社会人時代の苦労があった。