怪物・大谷翔平が「三刀流」になる未来も近い? 栗山監督が明かす

劣勢からの「大逆転劇」を振り返る
二宮 清純 プロフィール
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大谷のゴールは「三刀流」

そのひとつの回答が、7月3日、敵地での「1番ピッチャー・大谷」だった。日本ハムは首位ソフトバンクに7・5ゲーム差まで迫っていた。

プレーボールから5秒後、大谷は中田賢一の初球を振り抜いた。放物線を描いた打球は右中間スタンドに突き刺さった。まるで劇画のような一コマだった。

―この起用の真の狙いは?

「翔平はピッチャーとして初回の入り方が悪いんです。だったら1番でホームランでも打ってくれれば、気持ちよくスタートできるだろうって。

それに、いきなり翔平が打席に立ったら相手も投げづらいでしょう。あの頃、ウチはひとつの負けが命取りとなるような状況でした。翔平を、どう使えば相手が嫌がるか。それは常に意識していました」

実は大谷の起用法を巡っても、栗山は三原を意識しているという。

「三原さんの本にこういうことが書いてあった。日本ハムの初代監督は娘婿の中西太さん。その中西さんが初回から送りバントのサインを出した。それを見た三原さんは、〝こいつは監督の器ではないな〟と。要するに初回からのバントはプロ野球の発展につながらないということですよ。

そういう大局観が、三原さんの一番好きなところなんです。僕は今、プロ野球でメシを食わせてもらっている。この幸せな環境を、どう次の世代につないでいくか。そう考えていた矢先に、翔平のような選手と巡り合うことができた。

だったら、彼の力を借りてもっと面白いことができるんじゃないか。もっと別の表現方法があるんじゃないか。いずれにしても、彼の可能性はまだまだこんなもんじゃない、と思っています」

 

投手、野手、(1試合中での)二刀流、そして代打。大谷にはこの4つの起用法がある。

「いえ、まだあるんです」

口の端に知性派らしい小さな笑みを浮かべ、栗山はこう続けた。

「僕はアメリカでの〝三刀流〟をイメージしているんです」

―三刀流?

「そうです。彼には、まだ試されていない素質がある。それは、外野手としての守備力です。スピードもあるし、アメリカでも楽にゴールドグラブ賞をとれるくらいの能力を持っていますよ。

アメリカの球場は人工芝が少ない。ほとんどが天然芝だからケガのリスクも減る。向こうの恵まれた環境がアイツの幅を、もっと広げてくれると考えています」

遅かれ早かれ、大谷が海を渡るのは間違いない。問題は大谷の意思を理解し、使いこなせる監督がいるか、どうか。

いや、ひとりいる。他ならぬヒデキ・クリヤマである。一緒に海を渡る気はないのか。

「勘弁してください。僕がいま一番何をしたいかって、それはとにかく翔平から離れたいんです(笑)」

至宝を預かる重圧と責任は、察するに余りある。しかし、〝平成の魔術師〟にとって、それは同時に至福の時間でもある。

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撮影/浦川一憲 工藤了
写真提供/産経新聞 朝日新聞
出典/『西鉄ライオンズ 最強の哲学
中西太(ベースボール・マガジン社)

「週刊現代」2016年12月31日・1月7日合併号より