怪物・大谷翔平が「三刀流」になる未来も近い? 栗山監督が明かす

劣勢からの「大逆転劇」を振り返る
二宮 清純 プロフィール

栗山は、どんな思いでこのシーンを見つめていたのか。

「チームの柱として、全てを受け止めるのが4番。翔には、その力がある。日本の4番に育てるために、この5年間、苦楽を共にしてきたんです。

ここは最高の見せ場。〝行け、翔。オトコになれ!〟と心の中で叫んでいました」

執念の乗り移ったライナー性の打球はレフト松山竜平の前でバウンドし、フェンス際まで転がった。逆転の2点タイムリー。この一打でシリーズの流れが変わった。日本ハムは怒濤の4連勝で赤ヘルを寄り切った。

 

死中に活を求める―。これも三原譲りである。

「三原魔術」を語る上で欠かすことができないのが、'58年の日本シリーズである。3連覇をかけた三原西鉄の相手は、宿敵・水原茂率いる巨人。西鉄はいきなり3連敗を喫し、土俵際に追い込まれた。

普通の監督なら「ひとつくらいは勝て」と発破をかけるところだろう。

だが、三原は違った。敵地・後楽園で2連敗した後、福岡へ帰る夜行列車の車中で選手たちは酒盛りを始めた。三原は、それをただ黙って見守っていたという。潮目が変わる瞬間を辛抱強く待っていたのだ。

三原は語っている。

「要は、勝負師は機をつかむことである。油断とおごりは力のなかに巣くう白アリだ。その一穴から、強力なものも崩れ去っていく。力のないものがにぎる勝機。それが風雲に乗るということであろう」

勝てば王手がかかる3戦目、広島は満を持して、シリーズ直前に引退を表明したばかりの黒田博樹を先発のマウンドに送った。日米通算203勝のレジェンドである。

「これがウチにはよかった」

栗山の真意はこうだ。

「黒田が来てくれたことで選手たちは純粋に野球に向き合うことができた。〝あの黒田さんと対戦できるんだ〟という喜びで、〝オレたちは挑戦者なんだ〟と原点に戻ることができた。敵をも変える力を、黒田が持っていたということです」

このシリーズ、采配が後手後手に回った広島の指揮官を尻目に、栗山は果敢にカードを切り続けた。将棋でいえば「最善手」の連続だった。

「ワールドシリーズが参考になりました。シカゴ・カブス監督のジョー・マドンもクリーブランド・インディアンスのテリー・フランコーナ監督も先に先にと手を打ってくる。やり残すと後悔するとでも言わんばかりに。

これは僕も同じ考えです。負けるにしても手を打ち尽くして負けたい。そうじゃないと明日につながらない。使わないのなら代打を残しておいても意味がない。短期決戦は待ってはくれませんから……」

今季のパ・リーグMVPには「二刀流」の大谷が選ばれた。投げては10勝4敗、防御率1.86。打っては打率3割2分2厘、22本塁打、67打点。

いわく「二刀流は無理」。いわく「プロ野球をナメている」……。名だたるOBからの批判を、実力で封じてみせた。

二刀流をチームにどういかすか。栗山に問われたのは投打という2つの資産の運用法だった。