リトル・トランプの跋扈、倒錯する世界…今年の国際情勢の読み方

3つのキーワードで読み解く
笠原 敏彦 プロフィール

リトル・トランプが跋扈する世界

二つ目のキーワードは「リトル・トランプの跋扈」である。

トランプ氏が米大統領選を勝ち抜いたことは、トランプ流の言動を模倣するポピュリストを世界的に跋扈させることだろう。

日本のメディアでもイギリスの国民投票での欧州連合(EU)離脱決定やアメリカでのトランプ現象を受けてポピュリズム(大衆迎合主義)やポピュリスト政党などの言葉が頻繁に使われるようになった。しかし、相当に怪しげな言葉の使い方も見られる。ポピュリズムが何を意味するのかを問われると、意外と正確には答えられないかもしれない。

そこで、米外交誌「フォーリン・アフェーズ」11月号に掲載されたポピュリズムに関するカス・ムッデ米ジョージア大学准教授の考察をまずは紹介したい。

同准教授は、ポピュリズムとは何かについてこう説明している。

“社会を二つの同質的で敵対する集団、つまり、無垢な人々と政治的に腐敗したエリートへ分裂させるイデオロギーで、政治は民衆の意思を代弁するものでなければならないという立場を重視する”

そして、ポピュリズムは必ずしも非民主的ではないが非自由主義的であり、「マイノリティの権利や多元主義そして法の支配を無視する傾向がある」と指摘。

「ポピュリストの台頭は、『リベラルな政策』が『非民主的に』数十年にわたって続けられてきたことに対する『非自由主義的立場からの民主的反応』にほかならない」と分析している。

人種や性差、移民などをめぐる問題でポリティカル・コレクトネス(政治的な正しさ)を追求してきた欧米諸国には、ポピュリズムが台頭する共通の土壌があるという指摘である。

 

欧州の主要国では2017年に国政選挙が続く。

3月のオランダ総選挙では極右・自由党のウィルダース党首が、4~5月のフランス大統領選では極右・国民戦線のルペン党首が、ドイツでは新興政党「ドイツのための選択肢」が移民排斥やEU離脱などを掲げて勢いづきそうだ。

フランス、国民戦線のルペン党首〔PHOTO〕gettyimages

想像してほしい。トランプ大統領がお得意のツイートでこうしたポピュリスト勢力を支援するような発信を行ったらどうなるかを。

アメリカ大統領はその権威と注目度で、結果的にではあっても、世界の人々を感化する大きな影響力を持つことを忘れてはならない。

2017年は世界各地でリトル・トランプが跋扈し、国際秩序の土台を一層揺るがすことになりそうである。