老後破産を防ぐには、やっぱりアレを使うのが一番です!

「なんとかなる」は大間違い
深田 晶恵 プロフィール

投資の経験もないのに…

「それなら退職金を運用して、少しでも殖やそう」と考える人は多いだろう。

だが、これまでまったく投資の経験もない初心者が、いきなり不足分を補填できるほど利益を得るのはかなり難しい。自分で勉強せずに、金融機関ですすめられるままに投資商品を購入し、大きく目減りさせてしまって相談にくる人も多い。

3000万円あった老後資金が2000万円になってしまうケースも珍しくなく、「こんなことなら利息がつかなくても預金にしておけばよかった」と後悔する相談者もいた。

実は、老後破綻に陥らないためには、老後資金は「殖やす」よりも「減らさない」ことを考えることが大切なのだ。「減らさない」ためには、入ってくる収入が少なくなったなら、当然それに合わせて生活を変えなければいけない。ところが、案外それができない人が多い。

60歳で定年になっても年金を満額受給できるのは65歳から。ほとんどの人は60歳から65歳まで再雇用で働くことになる。定年前と同じようにスーツを着て出勤する毎日が続くが、給料は大幅にダウンする。勤務先によっても異なるが、定年前の年収の3分の1前後と心づもりしておく必要がある。

再雇用で働く人に多いのは「働いている間は、払えるものは払っていこう」と、家計の見直しをしないままにするケース。住宅ローンや保険の見直し、生活費の削減などをしないと、毎月の収支は当然赤字となる。

ボーナスも出るが、現役時代に比べると金額はごくわずか。旅行に行ったり、電化製品の買い換えなどこれまで通りのお金の使い方をするとボーナス以上の出費になる。赤字分の資金の出所は、退職金や老後資金だ。

毎月の赤字が5万円、ボーナス1回でマイナス20万円とすると、年間の赤字額は100万円!5年間続けると退職金は500万円減ることになる。65歳で年金だけの生活に入る頃には老後資金はずいぶん心許ない金額になる。

家計の見直しに着手しないままお金を使い、老後資金が大きく目減りしてはじめて「なんでこんなに金がないんだ」と怒り、急に「来月から食費は2割カットだ」などと高圧的に妻に対して無理な大リストラを宣言し、妻との関係もぎくしゃくしてしまうケースも多い。元管理職の男性に多いパターンだ。

これまで家計管理を妻任せにしていたため、生活にどのくらいお金がかかるのかまったくわからないのに、まるで部下に采配をふるうように一方的なリストラ宣言。これでは妻からブーイングがおこって当然だ。

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夫婦でやってください、夫婦で

このようになってから焦っても遅い。それではどうしたらよいのか?

定年の前後に「わが家の家計」がどうなっているのか把握することが必須だ。まずはおおまかに年間の支出を計算し、それをもとに予算をたててみる。つまり、仕事と同じく「決算&予算作り」をすればいいのである。

単に“節約しなければ”、と考えると特に我慢が苦手なバブル世代には苦痛かもしれないが、収支を考えて予算作りをする、と仕事と考えて頭を切り替えれば、もう少し前向きな気持ちになれるのではないだろうか。

ここで大事なのは必ず夫婦で相談しながらやること。生活感覚の薄い夫がひとりよがりに予算作りをすれば妻から文句が出るし、反対に妻任せにすると後で“こんなはずでは”ということも出てくる。

たとえば、日々の記入は妻の担当、それを集計するのは夫がやるという分担で進めてみてはいかがだろうか。とにかく、家計の管理は「定年後の夫婦の共同作業」と心得るべし。

ベタに家計簿がいい

そして、そのための便利なツールとしておすすめなのが、昔ながらの“家計簿”だ。

「えっ、そんな今さら家計簿なんてめんどくさい」と思う人も多いかもしれないが、年間の支出の管理、日々の出費の把握が確実にでき、さらに一年間の記録としても残せるので、非常に有効なのだ。

 

私は2010年から年金生活者専用の家計簿を執筆・監修しており、いかに年金生活者に使いやすく、かつシステマティックな作りにできるか、かなり頭を絞った。

最初は圧倒的に女性読者がほとんどだったが、ここ数年、確実に男性読者が増えてきていることを実感。そして、男性読者に圧倒的に人気なのが年間の収支が一目でわかるように記入欄がある“年間決算シート”。

相談にきたときにお見せすると「こういうのが欲しかったんだよ」と目を輝かせる男性も多い。仕事の延長のような気分で家計を可視化できるところがいいのだろう。

また、最近戻ってきたアンケートはがきの自由欄に「年金生活に入るので、生活費を見直すために妻と相談して買いました」というコメントを書いてくれた読者の方もいた。年金生活はまだまだ先という人は、年末年始の帰省時に両親にプレゼントするという使い方もできる。

老後破綻、と聞くとお先真っ暗なイメージだが、実際ちょっとした生活の見直しで防げるケースは多い。まずは少しでも早く現実を直視して、できることからはじめてみよう。