初対面の人と一瞬で打ち解ける方法 〜ぎこちない笑顔はいらない

斎藤孝の超実践的マニュアル
齋藤 孝 プロフィール

「一杯飲みに行こう」の意味

大学では、この身心のセッティングができたら、学生に四人一組のグループを作ってもらい、英語でコミュニケーションしてもらいます。自分が「これはすごい」「これが大好き」と思っていることを、自己紹介代わりに話してもらうのです。

犬が好きだったら「アイ・ラブ・ドッグス。ゼイ・アー・ラブリー・ラブリー! ベリー・ラブリー!」というような単純な英語でいいので、感情を前面に押し出したプレゼンをやってもらうのです。

その自己紹介が終わったら、犬なら犬の話題で相手と盛り上がる、という作業をしてもらいます。

これは英語の練習をしているのではなく、恥を捨てて、自分を出していく練習をしてもらっているのです。

話し手が自分をさらけ出していくと、聞いている相手も「向こうが自分を出してきてくれると気持ちが通じやすい。だったら、こちらもそこに乗っかっていこう」と感じるようになります。

相手がオープンな状態というのは、心の扉が開いている状態ですので、こちらも入っていきやすいのです。

このように、心と身体をオープンな状態にして自分をさらけ出していくと、相手と打ち解けやすくなるのです。

自分を出せない人間は相手から見て面白みのない存在ですが、最近の学生を見ていると、自分を出していくことを苦手とする人が増えているのを実感します。

社会人になると、取引先や会社の上司から「今度、一杯飲みに行こうか」と誘われることがよくあります。

実はこれは「仕事の場では出していない自分を酒場で出して見せてくれ」というサインなのです。どういう形でもいいから、ポロッと自分を出してほしい。そうすると「とっかかり」が出来て、情の部分が通いやすくなってその後の仕事や付き合いがやりやすくなる。

相手はその効果を肌感覚で知っているから、まだ情の部分で通い合っていない人に対して「今度一杯どう?」と声をかけるのです。

ビジネスも煎じ詰めれば人と人とのつながりで成り立っています。大きな取引ほど、担当者同士の信頼関係が必要になってくるものです。逆に言えば、相手と「通い合っている」という感覚が出せる人は、どの分野の仕事を任されてもだいたい大丈夫と言えます。