週プレ全盛期、読者なんていなかった。いたのは100万人の野次馬だけ

島地勝彦×田中知二【第4回】
島地 勝彦 プロフィール

シマジ あれをトモジは1年くらいやっていたよね。

トモジ いえいえ、3年もやらされました。たかが読者投稿ページだというのに、最終的には5ページにも膨れ上がりました。

ヒノ 読者ページが5ページですか。もはや奇祭ですね。

シマジ トモジにいったことをいま思い出したよ。「読者ページを熱狂の渦にすれば、必ず読者が集まってきて、活気がでるはずだ。だから新人などに任せておけない。お前がやれ」ってね。それを見事なページにしてくれたのはトモジの功績だね。

トモジ シマジさんは「面白ーい」とだけいってどんどんページを増やしちゃって、最後は5ページですよ。人気記事ランキングでも巻頭特集と「おらぁ読者だ」が五分五分の闘いを演じて、たまに巻頭特集を抜いたこともありましたよ。本当はそれではいけないんですけどね。

ヒノ 先ほどお聞きした「週刊誌祭り論」の通り、地味な読者ページからもド派手な花火を打ち上げていたわけですね。シマジさんが週プレの編集長になったころは、実売はどれくらいあったんですか?

シマジ たしか52,3万部ぐらいじゃなかったかな。堀内末男社長に呼ばれて「毎月3万部ずつ部数が落ちている。なんとかこの出血を止めてくれ」といわれたことを覚えている。週刊誌っていうのは30万部を切ると赤字になるんだ。

うろ覚えだが、出版業界の全盛期の売り上げは合計で2兆8000億円といわれていたような気がするな。その当時のパチンコ業界が3兆円で、豆腐屋業界も3兆円といわれていた。

ヒノ えっ、豆腐ってそんなに売れていたんですか!? そっちの方が驚きです。

シマジ そのころの日本人はよく豆腐を喰ったんだよ。いまじゃ出版産業の総売上は1兆5000億円にまで落ちてしまったようだけどね。

トモジ スマホにやられているんですよ。紙の雑誌や本を読む人間が激減しています。

シマジ だから、おれが閃いた格言を披露すると「文明が文化を駆逐する」ということになるんだよ。こんな時代に出版社に入社してくる新人は本当に可哀相だ。

ヒノ もしシマジさんがいま大学生だったら出版社を選んでいますか?

シマジ うーん、難しい質問だね。活字や写真が好きだから、貧乏しても構わないと肚をくくって出版社に入るかもしれないね。ほかに面白い職業はおれにはみつからない。大好きだから、たとえブラック企業といわれても働くかもしれないね。

ヒノ トモジさんもいま大学生ならやっぱり出版人になりますか?

トモジ いや、金持ちになれる職業を選びます。どんな職業かと訊かれてもいますぐに答えることは出来ませんが、とにかく大富豪を目指しますね。

ヒノ なるほど、祭りをやれる業界ですね。今日はおふたりのお話、とても面白かったです。ありがとうございました。

シマジ セオによろしく伝えてくれ。最近伊勢丹のバーにも顔をみせないんだ。元気なのか。心配しているといっておいてくれ。

〈了〉

田中知二(たなか・ともじ)
(株)集英社インターナショナル取締役
1955年群馬県生まれの茨城県育ち。最終学歴、駿台予備校(2年間)。同い年に、スティーブ・ジョブス、ビル・ゲイツがいる。特に、ふたりとの親交はない。『月刊PLAYBOY』『週刊プレイボーイ』『BART』と、ずっとシマジの下で編集生活。「そのことが、良かったのか、悪かったのかは、後生の判断に任せたい」

著者: 開高健、島地勝彦
蘇生版 水の上を歩く? 酒場でジョーク十番勝負
(CCCメディアハウス、税込み2,160円)
1989年に刊行され、後に文庫化もされた「ジョーク対談集」の復刻版。序文をサントリークォータリー元編集長・谷浩志氏が執筆、連載当時の秘話を初めて明かす。

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