トランプとの電撃対談も焼け石に水!? 急失速した蔡英文政権の行方

2017年、台湾はどうなる?
野嶋 剛 プロフィール

「移行期の正義」問題

ただ、蔡英文政権ならではという目新しい政策も見せている。それは8月1日に行った原住民(先住民)への謝罪だ。

台湾では人口2%の原住民が生活している。彼らは、長年、清朝時代、日本時代、戦後の国民党統治から一貫してマイノリティとして多くの制約を受け、言語や氏名の変更を強要され、長年伝統的に使ってきた土地も取り上げられるなど、苦渋を舐め続けてきた。

蔡英文総統はそれらの歴史に対して概括的な謝罪を行うことで、歴史的な負の遺産に決着をつけ、多元的な社会を目指す自らの政策を推進しようとしたのである。これは台湾では「移行期の正義」と呼ばれる問題であり、過去の権威主義体制のなかで用いられてきた多くの不当な措置や政策に「和解」をもたらせようという考え方である。

その「移行期の正義」のなかで注目されるのが、国民党の党資産の凍結・解体問題である。

 

戦後の1945年以降に、蒋介石率いる国民党が戦勝国の中華民国として、日本が放棄した台湾を接収したあと、日本人の資産をすべて自らのものとして党資産にしてしまったことで、国民党は一時、「世界で最も裕福な政党」と呼ばれるほどの巨額資産を手にした。

今日、その「不正取得」した資産を用いて選挙運動などを戦うことは不公平であり、党資産のなかで、接収によって形成された部分を返還するよう民進党は主張している。

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現在、民進党主導でこの国民党の党資産を精査し、不当取得部分を明らかにするための委員会が設置されている。この試みが成功すれば、ライバルの国民党の力は大きく削がれるだけではなく、台湾の「戦後」に一つの決着がつくことになるだろう。

だが、当然国民党は法廷闘争を含めた必死の抵抗で応じる構えを見せている。2017年の展開が政治的にも最も注目される案件であると同時に、蔡英文政権の安定飛行にも深く関わる問題になりそうだ。

国力において圧倒的な中国・日本との関係を深化させる台湾。日中台の複雑な三角関係を波乱の歴史、台湾の社会・政治状況から解き明かし、日本の進路を提言。

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