トランプとの電撃対談も焼け石に水!? 急失速した蔡英文政権の行方

2017年、台湾はどうなる?
野嶋 剛 プロフィール

ただ、ライバルの国民党については、前の総統戦候補でもあった新北市の朱立倫市長は36.8%、洪秀柱党主席は21.6%と、いずれも蔡英文総統より人気がないので、いますぐに民進党の優勢が脅かされる状況には陥っていない。

これに対して、蔡英文総統サイドは「現在は多くの課題を解決しているところであり、そのなかでは年金問題や週休2日問題など賛否両論大きく分かれ、過去の政権でも手がつけられないまま、放置されてきた課題も多い。異なる既得権益集団の権益に切り込むため、決着をつけようとすると必ず批判が出てくることはやむをえない」と現状について説明している。

つまり、産みの苦しみのための改革の「陣痛」だという認識だ。

確かに台湾は、戦後大陸から台湾に渡ってきて多くの面で優遇されてきた外省人グループの存在があるなど、日本では考えられないぐらい、社会の複雑性や多様性が高い。

また、メディアの報道が近視眼的な批判の声を取り上げて、客観的な意見をあまり紹介しない傾向もあり、政権党には不利な構造となっている。蔡英文総統同様、就任当初は高い支持率を誇っていた馬英九前総統の人気も数年たたずに失墜したのも、確かに、こういう台湾の構造的問題によるところが大きかった。

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ただ、それにしても人気の低落はいさささ急激すぎで、早々に「止血」しないと蔡英文総統の4年後の再選にも暗雲が立ち込めてしまうだろう。

「核災食品」は輸入できない?

ようやく12月に入って、ようやくクリーンヒットを放った。それは、世界を驚かせたトランプ大統領との電話会談だ。蔡英文総統の存在が改めて注目される形になり、蔡英文総統にとっては大きなプラスになった形だ。

 

それでも、これは一瞬の輝きに過ぎない。

TPP加入を重要政策に掲げる蔡英文総統としては、TPPを反故する方針を明確にしているトランプ政権の誕生は大きな痛手にちがいない。そこで大切になってくるのは、日本とのFTA交渉となってくる。だが、ここでも先行きが不透明になりつつある。

もともと日本や台湾の政府関係者が思い描いていたのは、年内に台湾側が日本の福島原発近辺の各県の農産品の輸入を台湾側が認めてくれることだった。

これは前任者の馬英九時代からの懸案であり、一度は台湾側がゴーサインを出すことを日本側にも伝えていたとされるだけに、日本側としては台湾に飲んでもらわないと、ほかの案件を友好的に前へ進められない案件になっている。蔡英文政権も11月ごろまでは日本側に楽観的な見方を示していた。

ところが、台湾では近年、近年食品安全に関する不安が高まっていることもあり、日本の福島近辺の食料品は「原発事故汚染食品(核災食品)」と呼ばれるようになり、完全に政治問題化してしまった。

国民党の一部からは住民投票で、食品輸入の是非を決しようと呼びかけるなど、格好の蔡英文たたきの材料にされてしまい、当分は解禁できない状態に陥っている。民進党の一部議員までが反対の声を上げていることは、蔡英文総統の党内掌握力を改めて疑問視させる形になった。

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