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やっぱり自宅で死にたい!名医が選んだ「看取られたい在宅医」150人

徹底調査:47都道府県別リストつき

人生で「一度きりで最後」の医者選び。良い在宅医の見分け方とは?

長年暮らした自宅で家族に囲まれながら最期を迎えたいと考える人は多い。だが現実に「理想の看取り手」を探すのはとても難しい。在宅の名医たちに「本当に信頼できる在宅医」を推薦してもらった。

最期は自宅で迎えたいが…

「がんを患った母が、余命3ヵ月となって、『やはり自宅で最期を迎えたい』と言うようになった。家に帰ると世話が大変そうだし、逆におカネもかかるのではないかと心配でしたが、母の願いもかなえてあげたくて、医者を探し始めました。

家の近くに病院はいろいろあるのですが、実際、看取ってもらうとなると、どの先生に頼めばいいかわからない。最終的に、いちばん近所の内科の先生に診てもらうようにお願いしました。

しかし、いざ痛みが激しくなって苦しいといっても医者はなかなか来てくれず、家族もパニックになった。母は結局、救急車で運ばれて、3週間ほど入院し、病院で最期を迎えました。望みをかなえてあげられなかったことが悔やまれます」

こう語るのは、埼玉県に住む若杉真哉さん(仮名、65歳)。近年、若杉さんの母親のように、最期は自宅で迎えたいという高齢者が増えている。内閣府が'12年に行った調査によると、実に過半数の人が「最期を迎えたい場所」として「自宅」を希望している。

だが、現実は大きく異なる。1951年には82%の日本人が自宅で息を引き取っていた。しかし、その後の60年で病院で亡くなる人が右肩上がりで増え続け、現在では80%近い人が病院で亡くなっている。実際に慣れ親しんだ自分の家で、家族と共に最期を迎えることができる人は12%ほどに過ぎない(厚生労働省のデータ)。

現在の日本では、「死」という人生最後の重大事に関して、患者の希望と現実が大きく乖離しているのだ。

一人暮らしでも大丈夫

今年7月に亡くなった大橋巨泉氏も、自宅で在宅医療を受けていた。

だが、もともと緩和ケアの専門家ではない皮膚科医がモルヒネを誤投与したことで、死期を早めることになってしまった。現在の日本では、理想的な在宅医を見つけるのがいかに難しいかを象徴する一件だった。

在宅医療の第一人者である長尾クリニック(兵庫県尼崎市)の長尾和宏氏が語る。

「国が在宅医療の普及を進めていることもあって、在宅医という言葉は知られるようになりました。しかし、その実情や利用のしかたを知らない人がまだまだ多い。

先日は、ある患者さんに『在宅医療は高いと聞いたのですが……』と相談されました。自宅で亡くなった芸能人の話を聞いて、お金持ちの芸能人だから自宅で死ねたのだろうと思ったそうです。しかし現実には、入院に比べて在宅のほうが医療費はずっと安くなることがほとんどです。在宅医療費は決して高価なものではありません」

他にも、がん患者が家で最期を迎えようとすると痛みに苦しむことになると誤解する人が多いという。

 

「病院ならナースコールですぐに看護師さんが来てくれるから安心だが、在宅では難しいと心配する人がいます。でも在宅では看護師や主治医の携帯電話がナースコールなのです。確かに同じ病院内にいるわけではないので、少し時間がかかると思いますが、痛みが出そうな患者さんには、前もって痛み止めを用意しておきます」(長尾氏)

最近では医療用麻薬も発達し、即効性の高いタイプや貼り薬など様々な種類があり、そのような薬を枕元に置いておけば、安心感につながる。東京都立川市で立川在宅ケアクリニックを開業する井尾和雄氏が語る。

「うちのクリニックは緩和ケアが専門です。基本的に在宅でできない医療はないと考えていますし、緩和ケアは病院よりも質の高いものが提供できる自信もあります。最近では脊髄を鎮痛標的にするクモ膜下鎮痛法を行うことが多いですが、こうした最新の麻酔技術も自宅で行えるのです」

また、一人暮らしの高齢者は在宅医療を受けるのは難しいとあきらめている人も多いが、それもまったくの誤解だと、長尾氏は言う。

「大都市で増えている独居の高齢者で、介護する家族がいない場合でも、最期までずっと家で過ごすことはできます。よいケアマネージャーを探して介護保険を上手に使うことで、末期がんでも最期まで自宅で楽しく生活している人もたくさんいるのです」

このように、近所に良い在宅医さえ見つかれば、自宅で逝くことは必ずしも難しくはない。では、どのようにすれば、良い在宅医を見つけることができるのか?

本誌は在宅医療の第一人者と言われる医師たちに取材を行い、良い在宅医の条件を聞きながら、実際に医師たちが「自分でも看取ってもらいたい在宅医」として挙げた名医150人のリストを作成した。