「EU離脱」国民投票から半年のイギリスでいま起きていること

【現地リポート】迷える伝統国家の行方
小林 恭子 プロフィール

英国側の希望的観測とEU側の拒絶のギャップ

果たして政府は、確固としたブレグジット案を持っているのか? これが国民の多くの疑問だ。

メイ首相は「ブレグジットはブレグジット」と繰り返し、具体的なブレグジット像を明らかにしていない。「交渉途中で手の内を明かすわけにはいかない」からだ。

それでも、メイ首相は首相就任直後、メルケル独首相、オランド仏大統領を電撃訪問した。和やかな雰囲気で向かい入れてもらえたものの、「ブレグジットの諸条件については、正式な交渉が始まってからではないと議論には応じない」と言われてしまった。

EUの単一市場に参加し続けるのか、しないのか、残留派が多かったスコットランド地方や北アイルランドの市民には特別の配慮がなされるのかどうか、域内外のEU市民の処遇をどうするのかなど様々な点が明確にされないままで今日まで来た。

テリーザ・メイ首相〔PHOTO〕gettyimages

野党議員らは「メイ政権は、実のところ、現時点で何の計画も立てていないのではないか」と憶測する。

EU市民の無差別な流入を避けたい英国は、EUの単一市場に今まで通り参加しながらも、移民の流入を止める案をEU側に何度か打診してきたが、「人、モノ、サービスの域内の自由な往来はセットだ」という答えが返ってくる。

14日、デービス離脱担当相が下院のブレグジット小委員会に呼ばれ、ブレグジット交渉の進捗について、2時間にわたり質問を受けた。デービス氏は「広い意味の概要はわかってきた」が、詳細を詰めている最中だと述べた。いつ交渉方針が発表されるかと聞かれ、離脱担当相は特定の日時を言わなかったが、「1月中ではない」とした。

デービスEU離脱大臣(右)が自動車業界とブレグジットについて会談(EU離脱省のウェブサイトより)

ハモンド財務相が「一定の準備期間が必要だ」と述べたことについて聞かれると「その可能性は否定しない」が、「最終的にどこに行くのかわからないと、準備措置は決められない」とも述べた。

「1つの案」として、単一市場に参加するために一定の費用をEU側に払うこともありうる、という。「ただし、ありうるとはそうすることを意味しない」。

結局、「まだ何も決まっていないのだ」という印象を与える質疑応答だった。

 

半年前の離脱決定の大きな衝撃は、今の英国にはない。どんなブレグジットになるのか、明確にわかっている人もいない。ブレグジットを骨抜きにしたい残留派議員とそうはさせまいとする離脱派議員や離脱に投票した国民との綱引き状態だ。

政府が目指すブレグジット像はまだ明確ではない。英国に拠点を置く外国企業も「待ち」の姿勢が続いている。