紅白歌合戦 極秘の「選出基準」に迫る

「ザ芸能界 TVが映さない真実」第8回
田崎 健太 プロフィール

CP着服事件とSMAP

現在では島田のように、芸能界の大物や、力のある芸能プロダクションと対等に渡り合える人間が制作現場を去っている。現場のスタッフは、芸能界との付き合い方に苦心しているようにも見える。

そのことは、現在のNHKが貫く「秘密主義」からも窺える。特に今年は、10月に「バーニングプロダクションが『レコード大賞』に関して金銭を請求していた」との疑惑が報じられたこともあり、現場スタッフの多くが堅く口を閉ざしている。

前述した質問状でも、具体的な選考過程について尋ねたが、〈制作の過程については回答を差し控えさせて頂きます〉という返答だけだった。

 

'80年代中頃までは、出場歌手発表の際、紅白両組のアンケート上位5組が毎年公表されていた。しかしその後は公開を取り止め、今年はアンケートを行っていたことさえ公表していなかった。

'04年に発覚した紅白スタッフの不祥事とSMAPの出場辞退を契機にNHKの態度が変わった、と指摘するのは、『紅白歌合戦の舞台裏』などの著書がある歌手・作家の合田道人である。

「あの時は、紅白など芸能番組を担当していた元CPたちの制作費着服が発覚し、当時の海老沢会長が、お詫びと説明のための特別番組を流しました。そして『開かれたNHK』をアピールするために、しばらく控えられていた出場歌手の世論調査を、紅白それぞれの上位15組まで公開しました。

ところが、そこで2位に入っていたSMAPが、新曲がなかったことを理由に辞退したのです」

NHKが最も怖れているのは、番組への批判が受信料不払いに結びつくことだ。金銭に絡む不祥事はもちろん、紅白という超巨大番組で視聴者の期待を裏切れば、不払いの増加は避けられない。

紅白の視聴率は、'84年の「都はるみ引退」で78%を記録して以来、長期低落傾向にある。昨年は初めて40%を切ったことが話題になった。

まして現在は、CDが売れず、国民の誰もが知る「流行歌」はもはや存在しない。かつてのように、アンケート最優先で皆が納得する出演者を選ぶことも難しい。

そんな中、いかに批判を避け、また芸能界との関係性を維持しつつ、独自色を出すか――近年の紅白スタッフたちが直面しているこの課題の難しさが、今年の出場者の顔ぶれには表れているように見える。(文中敬称略)

「週刊現代」2016年12月17日号より