部長、役員経験者が明かす!メガバンクの壮絶すぎる「出世競争」

これぞ究極のサラリーマン社会
週刊現代 プロフィール

疑心暗鬼の役員たち

合併前の「旧行」派閥をめぐっても、悲劇のような喜劇のようなドラマが生まれる。メガバンク現役幹部が「現在進行形の話ですが」として言う。

「A銀行出身の常務が牛耳っていた部署で、ある提携交渉を進めていた時のことです。その部門の常務がB銀行出身者に代わると、新しい常務は提携交渉にストップをかけた。

しかし、部下たちはみんなA銀行出身者で、『新しい常務はすぐに失脚する』と見て、水面下で提携交渉を続けていた。それが予想外に新しい常務はどんどん力をつけ、おまけに密かに交渉を進めていたことがバレてしまった。

その時、担当役員や部長らは即座に『下が勝手に暴走しました』と派閥の部下のクビを差し出して、自分たちはB銀行派閥にすり寄っていった」

現場で汗を流して、新規融資や新規預金を獲得するよりも、有力なトップ層に喰いこみ、引き上げてもらうことがバンカーの出世を左右する。多くのバンカーが、「実績を出すことより、いかに、だれに実績を『報告』するかが大事」と言うのはそのためである。

 

人事部で要職を経験した元幹部も言う。

「誰かが業績を上げたら、『自分がやらせた』と報告する人は、実に多い。役員になれば、現場の動きはよく見えませんから、実際に汗をかいている人よりも、報告をしているだけの人の評価が高くなるというケースをいくつも見てきました。

それに目立った実績を出すと、ハメられることも多い。たとえば、『C専務、すでにお聞き及びかとは存じますが、D部長が取引先との宴席で専務の批判をしているのが気がかりでして……』とやるわけです。組織人というのは権力を持てば持つほど、孤独になり、疑心暗鬼になっていく。そこにあえて、C専務が買っているD部長のネガティブ情報をチンコロする。

もちろん、そんな話はでっち上げなのですが、立場が上の人ほど、心が揺れてしまう。そして、実力のあるD部長より、チンコロ野郎を信用して重用し、出世させてしまう」

かくも壮絶な出世競争を勝ち残ったエリートだけが晴れて役員にまでのぼりつめる。と同時に、同期で役員が誕生すると、役員になれなかった行員たちは次々と「出向」で銀行から追い出される。

もちろん、出向すると年収は大幅ダウン。そのうえ、新たな職場で「トラブル」に見舞われるケースも少なくない。みずほ銀行の元支店長は言う。

「支店長だった50歳のとき、人事部の担当者から出向の話があり、『ついに来たか』と思いました。家に帰って妻に告げると、『お疲れさま』と言ってくれましたが、息子が結婚する時には支店長の肩書が良いと思っていたようで、少し残念そうでもありました。

それでも気を取り直して第二の人生を頑張ろうと思った矢先、取引先では役員として迎えてくれるはずが、実際に出向してみると話が違った。与えられたのは部長クラスの役職で、その後も役員になる見込みはないということが出向先の社長と話をしてわかったのです。出向先では銀行員のOBが一人もいなくて孤独だし、辛かった」

出向先の中には、銀行から借金しているから仕方なくという理由で必要でもないポストに迎え入れる会社もある。人事部で出向手配を担当していたバンカーが言う。

「処遇はいいけれど、行ってみたら窓際みたいなこともある。そんな『外れ』の出向先に行っても、本人のプライドが邪魔をして、誰にも言えずに一人で抱え込んでしまうOBは多い」

そんな出向者たちと打って変わって、役員として銀行に残り、常務、専務とのぼっていくトップバンカーたちは「幸せの絶頂」―かと言えば、実はそうでもない。彼らもまた、これまでとは違うまったく新しい「悩み」に直面しているからだ。

頭取の仕事はOBの「お守り」

ある副頭取経験者が、「こんなことは初めて言いますが」と前置きし、心の内を明かす。

「実は副頭取になった時に、本当にがっかりしたんです。副頭取というのはあくまで『副』だから、自分で決めるものがないんです。常務のときは自分の担当分野はトップのように決断できたから、抜群に面白かった。

それが副頭取になった途端、もうつまらない。いったいなんのためにここまで頑張ってきたのか。心の底から早く辞めたいと思いました」

専務経験者も言う。

「間近で見るとわかるのですが、実は頭取の仕事だってやりたいものではない。三菱銀行の元頭取も、『常務より後は全然面白くなかった』と言っていましたよ。なぜかと言えば、頭取の仕事で重要なのは、実はOBのお守りだからです。

たとえば、銀行というのは役員クラスでも出世が止まったら、どんどん企業に出向させなければいけない。そのために、出向先にいるОBに『次に譲ってくれ』と言いに行くのですが、文句を言う人がいるんです。

『俺の同期はまだ誰も辞めてない。俺は同期ではいい線まで行っていたはずなんだ。それなのに何で俺が先に辞めなきゃいけないんだ』とかね。こういう人たちの面倒を頭取が見てあげるわけですよ。

それに役員ОBの中には、待遇を求めてくる人も多い。海外の金融機関の給料が高いことを引き合いに出して、『自分はそんなにもらってなかった。どうするんだ』って。それで、辞めてからも相談役や顧問に残して、『残り』を払う。立派な本社ビルの上にそんな老ОBたちの部屋がたくさんあるのはそのためで、頭取がそのお守りをしている」

役員を長く務めるほど、そんな実態を目の当たりにし、「真剣に経営を考える人が減っていく」とこの元専務は言う。

「役員になりたての頃は、やっと自分のやりたいことができると燃えている人も、そのうちに『ここまで出世できたんだから、いいところに天下りさせてくれよ』となる。『お客さんが大事だ』と言って毎晩酒ばかり飲んだり、『国際化だ』と言って、金曜日に海外に遊びに行って、土日でゴルフをして帰ってくるとかね。

だから他業界から銀行の社外取締役に来た人は、驚くんです。これが日本を代表する巨大銀行の役員たちの姿なのか、って」

求めればキリがないし、出世したから幸せになれるとは限らない―。

頭取というたった一つの椅子を目指して闘い抜いた先に見える風景は、意外と「うらやましくない」ものだった。

「週刊現代」2016年12月17日号より