部長、役員経験者が明かす!メガバンクの壮絶すぎる「出世競争」

これぞ究極のサラリーマン社会
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人事部は見ている

言うまでもなく、第一選抜は年次を重ねるごとにより狭き門となる。40代前半で同期の1割ほどに絞り込まれ、先頭を切って役員になるのは、同期1000人中で10人ほどでしかない。

三井住友銀行の場合、毎年7月1日に前年度の評価を言い渡され、昇格の可否はここで知らされる。当然この日は、本部から全国の支社・支店、海外の拠点などすべてのオフィスで「得も言われぬ空気に覆われる」と、現役行員は言う。

「この日は朝行くと、上長から『呼んだ人来て』と年次順で全員が呼ばれるのですが、昇格対象年次の人がいる部署はとても緊迫します。その人が昇格するかどうかは、本人はもちろん、周囲もまた口には出さずとも気が気でないからです。

昇進できた行員は、呼び出された後に自分のデスクに戻ると、『みなさんのおかげで昇進することができました』と言って、拍手で迎えられる。

しかし、昇進できなかった行員は、一言も発さずに自分のデスクに戻り、何事もなかったかのようにパソコンを打ち出したりする……。当然、周りは声もかけられない。ただ、その人の出世がそこで止まったことだけがみんなにわかる」

かくも残酷な出世競争を勝ち残れるバンカーと、そうでないバンカーは、いったいなにが「違う」のか。

 

かつて頭取候補と言われ、実際にナンバー2までのぼりつめた神田大介氏(仮名)は、「仕事の良し悪しより重視されることがある」と断言する。

「旧大蔵省は東大時代の成績と国家公務員試験の成績を合わせた成績順にトップになるなどと言われましたが、銀行もそれに近いところがあります。東大卒を最高峰に早慶までの私大卒が圧倒的に出世しやすいのですが、それはなぜかというと、選ぶほうがリスクを負いたくないからなんです。

というのも、部下を評価する上司のほうもまた、人事部から『人を見る目』を見られていて、見る目がないと査定されると自分の出世に傷がつく。たとえばこいつは伸びると思って中堅私大卒の部下を最高評価したところ、次の部署に異動したらまったく使い物にならず、『あいつはなにを見ていたんだ』と評価者の査定にバツがつくことはよくある。

しかし、それが東大卒だと、『まぁ、東大卒でダメなやつもいるよね』で済まされるんです。だから、自分の保身を考えて、仕事の良し悪しよりも、『ブランド』で部下の査定を決める上司はすごく多い」

現在の3メガバンクの頭取は全員東大卒。次期頭取候補の面々を見ても、三菱東京UFJの柳井隆博氏は東大、みずほの石井哲氏は一橋大、飯盛徹夫氏は慶大、藤原弘治氏は早大。さらに、三井住友の橘正喜氏、車谷暢昭氏はともに東大で、太田純氏は京大である。いずれも高学歴がズラリと並んでいる。

派閥選びが出世を決める

神田氏が続ける。

「では、学歴が低いと出世できないかというとそうとも限らず、たとえば行内の試験で同期1位を取って表彰されたり、留学制度に選ばれれば、それは『ブランド』になる。

私の場合も、最初の配属がちょっと微妙な支店でしたが、そのあとで頑張って海外留学の権利を勝ち取った。で、留学から帰ってきたら、自分を仲間に入れようと近づいてくる上の人が急激に増えたんです。派閥の末端に加えておこうとね。

出世できるかどうかは、こういうインナーに入れるかどうかが最初の登竜門になる。役員にまで連なる派閥、グループのどこかに所属していないと、誰も見てくれないし、引き上げてもらえない」

しかし、派閥に入れればそれで安泰というものでもなく、ここからが本当の修羅場。まず求められるのは、派閥への絶対的な忠誠だ。

「私はのちにトップとなる役員の派閥に入っていて、ジャズバーに行っては、彼が弾くピアノに合わせて、私が歌ったりしました。それほどの信頼関係だったのが、一度の失敗ですべて崩れた。

私が不良債権処理に関わっていたとき、ボスの方針に逆らった債権回収をやってしまったんです。それから間もなく、派閥の先輩格が、『あいつを外せ』と命じたという話が聞こえてきた。そこで私の出世は止まりました」(本部の部長や支店長を務めた元幹部)

相手がたとえ上司でも言いたいことを言う、ドラマ『半沢直樹』の世界は現実には絶対にあり得ない……と、バンカーたちは断言する。

一方、いくら忠誠を誓っても、派閥のボスが失脚すれば、連なるメンバーが共倒れするのもまた現実である。三井住友グループの元取締役が体験談を語る。

「もともと頭取候補でもない先輩をマスコミに『次世代のキーマン』などと取り上げさせるなどして、先輩を出世させる。そうして先輩が出世すると、今度は自分も引き上げてもらうというのが派閥人事です。私はそうして派閥に尽力しましたが、これが裏目に出ました。

私がヒラ役員になった時、ある事業構想で社内が真っ二つに割れて、私のボスだった専務が他派閥に敗れた。派閥の先兵として動いていた私は真っ先に立場を失い、間もなく銀行を追われた」

当然、行員たちは派閥同士の「力関係」を探り合いながら、互いにどの派閥が有利なのかに目を光らせるようになる。

みずほ銀行の国際畑の元役員は、「海外支店にいると本部の畑の違う役員との接点ができにくい。だから、日本に帰国する時は企画担当や営業担当の役員陣になにかしら用事を作って、お土産をせっせと買っていく人がたくさんいた」と内情を明かす。

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