任天堂「イノベーションのジレンマ」を打破する“捨て身”の生存戦略

復刻版ファミコンは売れているけれど…
加谷 珪一 プロフィール

スマホ・シフトに苦しんできた

任天堂は明治22年(1889年)創業の老舗企業である。もともと花札メーカーとしてビジネスをスタートし、その後も、かるたやトランプ、家庭用テレビゲーム機と次々に新しい製品を投入してきたが、一貫して、ゲームというコンテンツをモノと一緒に作り込むという、コンテンツ・ベースのハードウェア・メーカーであった。

これまでのゲーム機はハードとソフトが一体となっており、任天堂のような企業は両者をセット販売することで高い収益を上げることができた。ところがここ数年で一気にスマホ・シフトが進み、ハードとソフトの分離が始まった。

スマホが基本プラットフォームということになった場合、任天堂の強みであるハードを十分に生かすことができなくなってしまう。ここ数年の任天堂はこうした環境の変化との戦いであった。

 

2014年3月期決算は、主力商品であるWii Uとニンテンドー3DSの販売不振から464億円の営業損失を計上。2015年3月期には何とか黒字を確保したが、経営立て直しの最中に岩田聡前社長が急逝。元銀行マンの君島達己常務が社長に昇格した。

現在は、君島氏の下で利益体質への転換を図っている最中だが、肝心の業績は振るわない。2016年3月期の決算は大幅な減収減益となり、2016年4~9月期(中間決算)では経常赤字に転落した。

中間決算ではポケモンGOの持分法による利益が計上されており、100億円ほど利益を押し上げる効果があったが、それ以上に、販売不振と為替の影響が大きかった。

こうした状況を受け、同社は2017年3月期の業績予想も下方修正している。売上高は前期比7%減の4700億円、経常利益も同65%減の100億円にとどまる見通し。

販売不振が続いていたWii Uは結局累計で1300万台ほどしか売れず、すでに生産中止が決定している(ちなみにWiiの累計販売台数は1億台を超える)。次世代機Nintendo Switch(ニンテンドースイッチ)が売れなければ、業績を立て直すことは難しい。

任天堂ホームページより

キャラクタービジネスを本格展開

そんな同社が成長の原動力として期待しているのが、キャラクタービジネスである。

マリオやポケモンなど同社が持つキャラクターの潜在価値は極めて高いといわれており、これを収益に変えることができれば、同社の収益構造は大きく変わる。

お手本になるのは米ウォルト・ディズニーといわれる。ディズニーは所有するキャラクターを積極的に外部展開しており、キャラクタービジネスが稼ぎ出す収益は映画の興行収入をはるかに上回っている。

任天堂は11月29日、大阪市のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)など内外3ヵ所で、マリオなどのキャラクターが登場するエリアを作ると発表した。これをきっかけにキャラクタービジネスを本格化したい意向だ。

だが、企業が既存事業の構造を転換することは容易ではない。

優良な顧客基盤を持ち、これまで高収益だった企業であればなおさらである。経営学の世界には「イノベーションのジレンマ」というキーワードがある。